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 包みを開け、箱の蓋を外すと、シルバーの小ぶりな星型のピアスが入っていた。小さなダイヤが幾つか付いて揺れるデザイン。いかにも女子が「可愛いー」と言いそうなピアスに思わず笑ってしまった。 「だから、言っただろ! わかってるって言いたいことは」  照れたように少し怒る小久保。 「うん、似合わねぇーって思った。イメージ全然違うし。ってかさー、逆にコレ着けてる私、想像して? どう?」  ケラケラと笑う。 「だから! 無理に着けなくていーっつーの。俺があげたくてあげただけだから。ほら、行くぞ」  照れたようにホテルの部屋を後にした。 「ごめん。うれしいよ。ありがと」  一頻り笑い、駅に向かってスタスタと歩く小久保に言う。 「オマエ、まだ笑ってんじゃねぇかよ。取ってつけたように言いやがって……まぁ、いいよ。受け取ってくれただけで」  その日はそのまま別れ、翌日。 「わー、ムラっちのピアス、可愛いねー。彼氏ー?」  朝からわざとらしく総務の三井さんが突っ込んできた。朝礼の前の時間でフロア内はもうみんな出社している。 「彼氏じゃないよ。なんか、センスのない男がくれてさー。モノに罪はないじゃん? とりあえず着けてみたんだけど……似合わないよねぇー」
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