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 小久保が外出から戻ってきて八重田さんに声を掛けた。別になんとも思わない。慣れている。アイツが八重田さんの世話を焼くのは今に始まったことじゃない。 「あー、琴ちゃん先輩のパンツ見えちゃいそうですよー?」 「えー、ちょっと、見ないでください。って……あ、わっ」 「あ! おい。八重田!」  小久保が慌てて叫んだけど、バランスを崩して落ちそうになった八重田さんを今井さんが支えた。  心配そうな今井さんの顔。 (いいな……か弱い女の子は。あーやっていろんな人がチヤホヤしてくれて)  自分とは真逆の八重田さんが羨ましいと思うことが今までも度々あった。それは小久保のことも関係していたけど、それ以外の要因で感じることも多い。 「だから待ってろって言ったのによー。大丈夫か?」  やれやれと言った様子でその場に近づく小久保。 「はい、ほら、押さえてるから。小久保くん、乗って」 「えー、今井さん、届くんじゃないっすか? それか、今井さんが取ってくださいよ。めんどくせぇ」 「微妙に届かないんだよ。それに、俺がイスに乗ったら天井突き破るだろ? 早く、ほら」 「うわー、すげー嫌味。はいはい、わかりましたよ。ちゃんと押さえててくださいよ?」
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