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 週明けの月曜、いつも通りの仕事が始まる。 「はい、首都圏統括センターです」  夕方、用事があって久しぶりに首都圏統括に電話をかけると、よそ行きの声を出した村瀬が電話に出た。 「埼玉支店、小久保でーす。おつかれ」 「あー、アンタか。おつかれ」  途端に声が低くなり素の村瀬に戻る。 「アンタかってことねぇだろ? 班長いる?」 「いないよ。まだ戻ってない。折り返す?」 「頼むわ。……忙しいか? そうでもねぇ?」 「うーん。ヒマ。今日はね」  あっけらかんとした答えに思わず笑った。 「そっか、よかったな」 「アンタは? 定時で帰れそう?」 「おぅ。帰れる」 『なに嬉しそうにイチャついてるんだよ』  電話の向こう側から聞き覚えのある施工の声が聞こえる。冷やかしたような笑いが合わさっていた。 「イチャついてませんよ! ……もう切るね」 「あぁ、じゃー」  電話を切ると——。 「小久保くん、村瀬さんと話してたんでしょ? 幸せそうにしちゃってー」  俺まで1コ上の滝沢さんに冷やかされる。 「え? あ……いや」 (べつに、そんなつもりねぇんだけど) 「いーよなー。村瀬さんと海行ったんでしょ? ビキニ? ビキニだよね?」
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