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「え? なに? 急に」
ずっと聞いてみたかった。
「嫌ならいい。……ごめん」
また沈黙が流れる。
「……優しかったよ。すごく。いっつも『ゆりちゃん、ゆりちゃん』って私のためになんでもしてくれて」
ゆっくりと静かに話し始めた村瀬。
「ちょうど高校卒業した時かな……。ばあちゃん、心臓の病気になってさ。『ゆりちゃんのために長生きしなきゃ』って言って手術したんだけど、ダメだったんだよね。よくならなくて……」
黙って聞いていた。
「『ゆりちゃんとずっと一緒にいるからね』って言ってたのにさ……。きっと私のせいで長生きできなかったんだよ。無理させたんだよ、きっと……」
「無理じゃなくて、やってやりたかったんだろ。ユリのために。大切な人のためならなんでもできるし、なんでもやってやりたくなる。……オマエもわかるだろ? その気持ち。ユリのせいじゃない」
「……どうだろうね。でも、なんでもしてあげたくなる気持ちは……わかる。……そっか。そうなのかもしれないね」
俺の自己満かもしれないが、少しだけ重荷を軽くしてやれたような気がする。
しばらくお互い黙って景色を見ていた。
「ねぇ、高速降りたってことは、もうすぐ着く?」
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