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(そんなこと……わかってるよ) 「自分のことを優先して何が悪いんですか? 仕事なんて代わりはいくらでもいるんですよ。それにできちゃった結婚も私は理解できます。子供ほしいってはっきり言ってる人と、怖くて軽々しく結婚なんてできないですよ」  呟くように言った言葉がどんどん大きくなっていたようだ。 「何言ってるんですか? 八重田さんの言ってること、おかしいですよ。仕事は責任を持つべきだし、結婚と子供の順番も守るべきです。そもそも、好きだから結婚してその結果、子供ができるんですよね?」 「アンタにはわからないだろうね。別にわかってほしいとも思わないし。……八重田さん、庇ってくれてありがとね」  夏目さんの真っ当な意見に、村瀬さんが諦めたような口調で静かにお礼を言ってくれた。 「なんですか? それ。私、何か間違ったこと言ってますか?」 「なっちゃん、黙ってな。俺たちにはわからないんだよ、きっと。子供の話ってさ、他人が口出しするようなことじゃないんだよ。夫婦でも考え方違ったりするし。小久保くん、村瀬さんとよく話し合った方がいいよ」  今井さんが落ち着いた口調で夏目さんをいなし、落ち込んだ様子の小久保に言葉をかける。
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