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「……八重田さん」
村瀬さんが席を外すと小さい声で飛鳥さんに話しかけられた。
「あのさ、村瀬さんにちょっと話聞いてみてくれないかな。俺が聞くとセクハラみたいになっちゃいそうだし、率直な意見も聞けなさそうだしさ。何気ない日常会話の内容、教えてくれればいいから」
「え? 私がですか? それに、日常会話を教えるって……なんか密告しているみたいで嫌なんですけど」
「うーん。それもそうだねー。八重田さんの判断で俺に話すかどうかは任せるから。……とにかく、どういうつもりっていうか、気持ちを知りたいんだよね。仕事に対するビジョンとか、小久保くんとの結婚とか?」
そこで村瀬さんの姿が見え、話は終わる。
(そんなこと言われてもなー、あんまり深い話、できないと思うけど……)
仲が悪いというわけではないが、もともとあまり深い話をしたことがない。それは村瀬さんに限らず、他の女性社員も同じ。
お昼休み。休憩室には私と三井さんのみ。木戸ちゃんは外出しているし、たまたまなのかわからないけど、他の女性社員も今日はいなかった。
「ちょっと! ムラっち。大丈夫? ってか、どういうこと? 小久保とセフレとか、子供作るとか」
村瀬さんが休憩室に入ってくるなり三井さんが詰め寄る。
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