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「ん? 噂? なんのですか?」 「いや……。今日、相談っていうか、電話があったんだよね」 (相談? なんか悩みでもあるのかな) 「……琴音ちゃん、内緒にできる? 知らなかったことにしといてね」  そう前置きして——。 「社内で結婚する場合、籍入れなければ異動の対象にならないのか、とか、男女どっちが異動になるのか、とか聞かれたんだよ。……そーゆーこと、だよね?」  お玉で鍋を取り分けながら小声で言い私を見る。 「え! 絶対そうじゃないですか! なにそれー。でも、全然聞いたことないですよ。そんな噂。そんな素振りもないです」 「そうだよね。でもさ、俺たちもなんだかんだで隠し通したじゃん? 小久保くんも誰かと付き合ってて隠し通して結婚するんじゃないの?」 「あぁ、確かに……あり得ますね。でも、話の内容からして、かなり近い人なんじゃないですか? だって、異動とか言うくらいだから……同じフロア?」  自分で発した言葉に自分で驚いてしまう。 (え? 同じフロア? えー? 誰?) 「まだわかんないけどね。小久保くん、誰かに相談されたって言ってたし。まぁ、見え透いたウソだと思うけど」  そう言ってニヤッと笑った。 「今日のお鍋おいしいね。俺、この味好き」
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