『全てはこの作品の為に』

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「……この作品は、作者のイヲ先生が『恨巫女はコメディー色が強い分、後半のバトル展開で怒濤の勢いを作り、一つの作品として爪痕を残したい』という意向があるそうなんです。我々としても、主人公死亡では後味が悪くなってしまうので、何度も話し合いをしているのですが……」 「めえええええ!!! そしたら、イヲ先生とお話しだけでもさせてくだざい!!! 俺、ファンレターも送ったことあっで!!!」 私は涙と鼻水を流しながら、担当編集の足にすがり付いた。  担当は、苦虫を噛み潰したような顔で、スマホをタップし、どこかに電話をかける。 「……あ、イヲ先生ですか。お疲れ様です。今、アニメの主題歌の打ち合わせ中なんですが、どうしても先生とお話しをしたいとのことで……はい、はい……」 私は鼻水を服の袖で拭きながら、スマホを受け取った。 「ヒン……ヒン……イヲ先生……いつも応援してます……恨巫女ちゃん、コミックス全巻、初版で持ってます……あの……読み切りの時から応援してて……ヒン……さっき……極秘資料……読んで……死んじゃうって聞いて……受け入れられなくて……ヒン……あ……すいません申し遅れまして……私……いつもファンレター送らせてもらってます……鈴木ヨシオです……」 「彼、本名鈴木ヨシオって言うんだ」 監督が小さく呟いた。
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