どうしてこうなった

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 休日の昼間から律がいるなんて珍しい。いつもは自宅に籠ってゲームでもしているのに。そんなふうに思いながら、リビングに通された。  ブラックコーヒーを目の前に、律はテーブルの上に頬杖をついて片手でスマートフォンを操作していた。額縁があったら絵画のようである。  グレーのVネックのニットが細い首を際立たせている。  片付けられた空間に似合う律が、視線だけを璃空に向けた。 「来るって知らなかった」 「言う必要あった?」  他人から見れば険悪ムードに見えるが、これが彼らの通常である。お互いに似ている部分があるのは承知している。ただ、関係を拗らせるのも単に面倒なだけだった。 「3人で集まるとか何ヵ月ぶり? 半年?」  陽気に蓮が言う。璃空は律の向かい側の席を1つ空け、椅子を引いて腰を掛けた。蓮はそのまま冷蔵庫を空ける。それはただの動作に過ぎず、すぐに扉を閉めてコーヒーカップをコーヒーメーカーに設置してエスプレッソのボタンを押した。  その姿を横目に「蓮が七海と関係をもった辺りからか」と璃空が言った。その瞬間、空気が凍る。普段冷静な律でさえ顔を上げた。 「……は? なに言ってんの?」  血の気が引いた蓮は、振り返ることができずにそう言葉だけ投げ掛けた。泳ぐ視線は目の前のコーヒーメーカーだけを捕らえる。マンションを購入した時、新築祝いで律にせがんだものだ。白が基調でスタイリッシュ。置いてあるだけでもオシャレに見せるが、コーヒーの味もそこそこである。自分用に一杯淹れてから気に入って毎日飲んでいる。客人用も専らこれである。  コーヒー豆の香りが漂う中、「七海から聞いてる」と璃空は言う。 「な、七海から……?」  ゆっくり振り返る蓮。無表情の璃空に苦虫を噛み潰したような表情の律。律に関しては完全に軽蔑している証拠である。 「……七海って璃空の妹の?」 「そう」 「いつから知って……」 「半年前。お前が七海を抱いた翌日に本人からカミングアウトされた」  先ほどの律のように頬杖をついた璃空。抑揚のない声が、憤りを感じさせ蓮は更にたじろぐ。  これはまずい。そう思った蓮は慌てて「ご、ごめん。手を出すつもりはなかったんだけど……なんつーか……」ととりあえずは謝罪した。  璃空は興味なさそうにゆっくりと瞬きをし、「別に。それはいい」と言った。  拍子抜けした蓮は「へ?」と間抜けな声を上げ、律は何かあるなと目を細めた。 「七海も大人だし、俺が口を挟むことじゃないから。だから聞いたところで蓮にも言わなかったし、そのまま放っておいた」  璃空らしい言い分に、はあ……とため息にも似た声が溢れる。じゃ、何なのかと蓮が顔をしかめると「それはいいけど、叶衣が気付いた」と続けた。
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