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「思い返せば、毎週毎週会う度にセックスしかしてない気がするんだよね。もちろん、会話はするよ? 一緒にいて楽しいし。でもさ、どう考えてもやっぱり七海と私どっちを彼女にするかって思ったら七海の方がスペック高いよね」
「自分で言ってて悲しくないの?」
さすがに呆れた様子の璃空に、思わず笑いを堪える律。浮気をされたというのに、浮気相手の方を持ち上げるんだから肝の据わった女だと感心する。
「まあ、悲しいけど現実は現実だからね。だから、もしかしたら浮気相手は私の方かもしれない」
叶衣の言葉に、璃空は横目で蓮を見る。顔の前でブンブンと右手を振る蓮。本命はちゃんと叶衣だったと言いたいのだ。
「違うみたいよ」
さらっと璃空が言ったことで、蓮と律が目を見開く。
「え?」
その表情の変化と叶衣の反応に、「やば」と口だけ動かして「俺はそう思うけどね」と付け足した。
「そうかな。まあ、でももうどっちでもいいや」
「いいの?」
「うん。だって、蓮ちゃんに会ってみなよ。七海の顔がチラつくじゃん。知らないふりして付き合っててさ、七海のナカに突っ込んだもの向けられてみなよ。あたしゃ無理だよ」
盛大なため息が聞こえ、律は肩を震わせて笑いを堪えている。璃空は下品な叶衣の言葉に表情を崩しながら「じゃあ、無理だな」と答えた。
「だから別れる。今日言うわ」
「この浮気野郎って?」
「どうかな。もう別れるって決めたら理由とかどうでもいいかも」
「蓮と七海が結婚しても?」
「祝儀10万包んでやるわ」
「え、式呼ばれるつもりなの?」
「そりゃそうだよね。私を裏切って楽しんでたんだから気まずい中でケーキ入刀とかしたらいいわ。あっさり別れるなんて都合良すぎるよね。せめて結婚くらいしてもらわないと浮気されがいがないわー」
その言葉についに璃空が吹き出した。普段大笑いなど滅多にしない璃空が歯を出して笑う様子に律も堪らず腹を押さえる。
蓮はその場で立ったままテーブルに顔を伏せ、頭を抱えた。
「浮気されがいってなに。そもそも甲斐なんてないでしょ」
「だってさ、こんなに蓮ちゃんのこと好きだったのに乱されるだけ乱されて、気付いたら別れてたなんて悔しいじゃん。七海が本気で蓮ちゃんのこと好きなら、責任取るのが筋だと思うけどね」
「浮気の代償は重いね」
「まあ、決めるのは2人だからもう関係ないけど。あーあ、婚期逃したわぁ」
「結婚、したかったんだもんね」
璃空がふっと口元を緩める。蓮は、買ってあったエンゲージリングの存在を思い出し、瞳を揺らした。
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