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「それでなんて答えたの?」
「皆さん、優秀なんですねぇって。ううん、一応大学くらいは、ね? ってさ。一流大学出てても、彼女の友達とセックスしてるような性欲お化けもいるのにね」
大きな一撃を受けて、蓮の心は抉られるようだった。適切なタイミングで打ち込んできた言葉に、璃空も失笑する。
「まあ、そうだね」
「あれ、なんなんだろうね? 一応、T大ですってやつ。書籍にもなってたけどさ、謙遜の意味で使ってますみたいなやつ。こっちから大学どこですか、からの一応ならわかるのよ。問題はね、聞いてもないのに一応T大出てるんですけどから入るタイプのやつね。
完全に凄いですね、頭いいですねを待ってるじゃん? こっちも気を遣って持ち上げてるのに謎の理論とか持ち出して面白味のない話を空気も読まずに続けるじゃない?」
思い当たる節が多過ぎて、一旦動きを止める3人。こんなにも堂々と悪口とも取れる文句を言われたのは初めてだった。
「お、おー……言うね」
「りっちゃんみたいなまともな卒業生もいるけどさ、ニートも多いし、蓮ちゃんみたいな射精することしか頭にない男もいるし、あんたみたいなサイコパスもいるし」
「待って、何でそこで俺。蓮はわかるけど律がまともな枠に入るのも納得いかないし」
さすがにこれには璃空も反論する。至ってまともな話をしているつもりなのだ。それをサイコパス呼ばわりされれば面白くないのも当然である。更に、首席で卒業した律がここでも褒められるのかと顔をしかめる。
律は、当然といった様子で何度か頷く。叶衣の中ではすっかり性欲を満たしたいだけの男として成り下がった蓮は愕然とした表情を見せた。
「だって、結婚だよ?」
「俺、料理できるよ」
「……え?」
学歴の話はどこへやら。さらりと話題を変えたが、叶衣にとっては聞き逃せない言葉だった。
「叶衣、料理苦手じゃん」
「何で知ってる」
「七海に聞いた。できるふりして蓮に振る舞ったって」
真顔で言った璃空に、本人の前では言ってやるなよと眉を寄せる律。作ってもらった料理はどれも美味しかったけどなぁと首を捻る蓮。
「ちょ……。つら……。私さ、ほんとに料理嫌いなの。野菜の皮剥くのも、鍋の前に張り付いてるのも、後片付けも。蓮ちゃんに料理作った時もさ、事前に七海の家で教えてもらって、作れるようになってから行ったのね。だから、材料の量が少しでも変わるともう作れないだよ」
こそこそと声をひそめて言う叶衣。ここだけの話ね、なんて言い方の叶衣が思い浮かび、璃空も律も再び笑いに耐えた。
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