どうしてこうなった

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「瞳ちゃん、酒強いイメージだったけどな。そりゃ周りも大変だったね」  蓮の友達の彼女の友達という間柄になる叶衣の上司。瞳のおかげで叶衣と出会い、最初はお菓子の話ばかりする食い意地の張っている子だと思っていた。言葉遣いもお世辞にも綺麗だとは言い難く、さらっと下ネタを言ったりもする。  女の子なのに変わってるな。最初はその程度だったのに、一緒にいれば楽しくて、女友達の中でも特段仲良くなった。 「友達になって下さい!」  最初からそう叶衣に言われていたから、男友達がほしいのかと単純に思った。蓮の恋人候補は皆、蓮を褒めて持ち上げて、自分を最大限アピールして見せた。なのに叶衣にはそれがない。だから、叶衣が蓮に恋愛感情を抱いていたと知ったのも、蓮から告白してOKをもらった時だった。  珍しく璃空に誘われて3人で食事をしたり、璃空が思い付いたように叶衣の話をしたり、気付けばいつも叶衣のことを考えているような気がした。  顔を伏せてスマートフォンの画面を見ている顔は美しかった。黙っていれば可愛い。そんな言葉が似合い過ぎて、こんな子にはきっともう二度と出会えないだろう。そう思って笑えた。  いつの間にかそれが恋愛感情に変わっていると気付いたのは嫉妬だ。 「叶衣、今日デートだって」  ある日璃空がそんなことを言った。なんで元々友達だった俺を差し置いてお前が知ってんだと腹が立つが、問題はそこではない。  デートという言葉で叶衣が急に女らしく見えたのだ。璃空や律を見れば大概の女性はきゃっきゃとはしゃぐ。2人の話をしたら、会ってみたいというから会わせたが、叶衣は蓮に対する態度と全く変わらなかった。  猫を被ったり、自分をよく見せようと見栄を張ったり。そんなことが全くないのだ。見栄とマウントの世界を多く見てきた蓮にとってはそれは居心地のいいものだった。  そんな叶衣が、自分とは違う他の男とデートをしている。T大卒で、ミスターT大で将来有望な経済力のある男。自分でいうのもなんだが、恋人にするには最高の優良物件ではないかと思う。そんな自分を差し置いて、叶衣を振り向かせる男はどんな男だろうか。  恋愛感情を持った叶衣が好きな男に見せる顔はどんな顔だろうかと頭の中をぐるぐると駆け回る。  彼氏の前でだけしおらしく、夜は可愛く恥ずかしがるのかもしれない。そう想像したら、どんな男も知らない叶衣を独占してみたくなった。  もやもやと考える度、叶衣のことで頭がいっぱいになり、彼氏はいないと言った叶衣を誰にも取られまいと想いを告げたのだった。
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