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七海の反応に気付いた舞が笑顔で「璃空ちゃんと叶衣ちゃんからベールガールとリングガールをお願いされてるの。2人とも張り切っちゃって」と言った。
2人の役に立てると舞も嬉しそうだった。
「ベールガール……」
蓮と七海の結婚式には子供の演出を入れなかった。何事もプロに任せておけば間違いないのよと言った義母に従ったのだ。
あまり友人の結婚式に出席したことのない七海は、いまいちピンときていない様子だった。
そんな状態でも時間は進む。あっという間に挙式の時間は迫り、皆それぞれ移動する。
叶衣と璃空も案内に従い、緊張の中深呼吸をした。
挙式会場は目の前にどんっと富士山が見える絶景だった。ドアが開いた先にはフラワーガールとしてお願いした瞳の娘。その先に広がる美しい景色。
その光景を見ながら叶衣は幸せな気持ちでいっぱいだった。
叶衣は2ヶ月前、瞳にフラワーガールとフラッグボーイのお願いをした時のことを思い出していた。
改めてお願いに、と思っていたのだが仕事終わりに夕食に誘われた叶衣はそれとなく式の流れを瞳に伝えていた。
「妊娠してる中での結婚式になるので、子供達の演出がふんだんにできるような式にしたいんです。職場の方も呼びますけど、親族と本当に仲の良い友達くらいでいいよねって言ってて。だから、アットホームな式にできたらいいなって」
「あらあら、いいじゃない。もちろん、うちの子でよければ使って。むしろそんな大役与えてもらっちゃって光栄よ」
瞳はとても喜んでいた。
夫も叶衣の元上司ということで、年に何度か家に呼ばれて共に食事をすることもあった。その度に子供達にお菓子やらおもちゃやらお土産を持っていっていたため、子供達も叶衣になついていた。
そんな経緯もあり、子供達による演出も快諾してくれたのだった。
「パーティーの方は無事に終わったみたいね」
話は変わり、蓮と七海の結婚パーティーの話題となった。あれから1週間後にあたる本日、瞳は何気ない顔で言う。
「終わりました。参加……されなかったんですね」
「呼ばれてないもん」
その言葉にぐっと押し黙り、目を泳がす叶衣。
「なんであんたがそんな顔してんのよ。当たり前でしょ? 大野くん紹介したの私なんだから。情報筒抜けの私なんて呼ばないでしょうよ」
「まあ……そうですよね。でも、瞳さんのお友達と蓮ちゃんのお友達は来てましたよ」
上目遣いで瞳を見上げる叶衣。2人の姿を見つけたが、璃空が気を利かしてその場を離れたのだ。結局挨拶などしないまま、早めに母屋に戻ってきた叶衣達。
友人達も状況を見てわざと叶衣に声をかけなかった。
「うん。一応パーティーは行くって言ってた。でも来月の式は行かないってよ」
「……え?」
「そりゃそうでしょ。皆察するよ。結婚するって聞いたら皆叶衣ちゃんが相手だって思ったんだもん。それが招待状開いたら別の女でしょ。私は叶衣ちゃんから聞いてたけど、他の皆は招待状届いてから、あれ? 最近まで付き合ってたよね? ってなったよ」
「なりますよねぇ……」
「なりますよ。皆大人だから、本人達の前では祝福したよ。そりゃ。大野くん本人もそこには触れなかったみたい。皆、気を遣って深掘りしない変わりに、挙式の参加はやめようってなったのよ。東京だし、パーティーだけ出席してご祝儀渡せば十分でしょって」
その言葉に叶衣は苦笑した。
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