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蓮の友人とその彼女である瞳の友人との面識はたった1回だけだった。付き合うことになったきっかけをくれた人々にお礼が言いたいと軽い食事会をしたことがあったのだ。
友人達も、あれから2年なんの報告もなければ良好な関係を築いていると思っていた。蓮に関しては、結婚も考えているなんて相談すらしていたほどだ。
それがたった数ヵ月後には別の女性との婚約どころか挙式が決まっているのだから不審に思うのは当然のこと。
爽やかに一途に見えた蓮だけに、周りの反応は酷いものだった。
すぐに瞳のもとにも友人から電話がきたのだ。
「ねぇ、蓮くんの相手、叶衣ちゃんじゃないみたいなんだけど……名前、間違えてるとかじゃないよね?」
「ああ、違う違う。別れて電撃結婚みたいよ。まあ、そんなこともあるでしょ」
辛い叶衣の気持ちを汲んで、真実は伝えなかった瞳。
「えー、なんか……ああ、そう。ふーん、なんかひくんだけど」
「まあまあまあ」
「そういうことだよね?」
「ご想像におまかせしますよ」
「え? 俺には叶衣しかいないくらいのこと言ってるって聞いてたんだけど」
「ええ、仲睦まじかったですよー」
「うちらより結婚早いかもなぁなんて思ってたんだけど」
「早かったじゃない、別の女だけど」
「……祝儀もあげたくないんだけど」
「お好きにどうぞ。私の方はパーティーすら呼ばれてないからね」
電話越しに鼻で笑った。ここまでくると怒りや悲しみよりも呆れたが勝る。
「そりゃ、呼べないよね。紹介した張本人だもん」
電話越しでゲラゲラ笑う友人には些か腹も立った。
「でもいいの。叶衣ちゃんも新しい彼いて結婚するから。それはそれは凄い溺愛振りらしいよ」
「え!? そうなの!? どうせならそっちに行きたいわ」
「いいでしょ。呼ばれてるもんね」
「やっぱり結婚は皆から祝福されてなんぼだよねぇ。まあ、もう東京に行くらしいから好きにしてって感じだけど」
状況を察した人々はこのように冷めた状態であり、瞳が言ったように誰一人として蓮と七海の結婚式には参加しなかった。
なにも知らない東京の友人達だけがこぞって2人を祝福したのだ。
そんな蓮と七海の挙式とは反して、瞳の子供達が可愛らしく花を撒く。
その姿に叶衣もつい笑みが溢れた。更にその後ろをベールガールの結月がついてくる。子供達の演出と目の前の絶景に、会場は穏やかな雰囲気に包まれた。
リングガールの芽依が嬉しそうに叶衣に向かってくる。大地にそっくりな整った容姿が余計にゲストの心をくすぐる。
「可愛いー」
こそこそと声が聞こえる。
その光景を見て真顔の七海。子供達ばかりに囲まれて、更に自分のお腹にも子供がいるときた。華やかで美しい叶衣の姿に、誰もが歓喜の息をつく。
「綺麗だねぇ……」
「きっといいお母さんになるよね」
満面の笑みを子供達に向ける叶衣に、ゲスト達は自然と叶衣の母性を感じていた。
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