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七海は沸々と沸き上がる憤りを我慢する。
……ベールガールってあれのこと? なによ、あんなにたくさん子供達を使って……。
いいお母さんになるよねですって? ああ、そう。私には母性がありますよっていうアピール? よそ様の子供まで使って、なんて計算高いのかしら。
蓮と七海が行った挙式よりもずっと小さな式場にも関わらず、青い空と大きな富士山までもが璃空と叶衣を祝福しているようだった。神父の前に2人が立ち、その後ろに佇む富士山。6月下旬に大量の雨が降ったこともあり、まだ雪が残る富士山はとても美しかった。
な、なによ……。自然の景色なんて、別に羨ましくもなんともないわ。富士山なんていつでも見られるもの。むしろ、あんなに大きな富士山を見せつけて、下品だわ。
蓮と私の式の方がよっぽど……。
そう思いながら隣の蓮を見上げる。
ぼーっとした表情で叶衣に見とれていた。
ウェディングドレス姿は、蓮が想像した以上だった。璃空が選んだドレスだとも知らず、その純白に包まれた美しい姿に魅了されていた。
その視線に気付いた七海は、鬼の形相で震える手を握りしめた。
私の方が似合ってたのに! 私の方がスタイルもいいのに! 結婚式は花嫁が主役なのよ! なによあれ! あんなのただのお遊戯会じゃない! 子供、子供、子供! 来賓も皆子供連れ!
あの子の友達なんて皆子持ちじゃない。どうせくたびれた主婦ばっかりなんだわ。
あー、いやだ。若い内から子供産んで苦労して、1番綺麗な20代を無駄にして。子育てに疲れて老け込んだ友達ばかり集めた見苦しい式だこと!
そんな七海とは裏腹に叶衣は幸せを噛み締めていた。前撮りはしたものの、挙式で見る璃空のタキシード姿は、叶衣でさえ息をのむほど。特別な雰囲気と装いで気が高まっているのはなにも璃空だけではないのだ。
不思議な男だと思っていた璃空の深い愛情に触れ、柔らかく微笑む顔は変わらず誰もが認める美しさ。
あー、本当に私この人と結婚したんだ。
今更また実感する。指輪を交換し、誓いのキスをもらう。皆に祝福されるが、見つめ合う2人はすっかり2人だけの世界。それがまた微笑ましくて、ゲスト達は心から祝福した。
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