華やかな結婚式

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 進行役の案内により、外に出れば海が一望できるガーデン。太陽の光をふんだんに受け、水面を反射させる。キラキラと輝く海を目の前に、笑顔で笑い合う璃空と叶衣。  ゲストがほぅ……と儚げな吐息を漏らし、今まで見たことのない璃空の笑顔に、璃空の友人達は目を丸くさせた。 「桐生、本当に奥さんのこと好きなんだな……」 「なぁ。あんなに嬉しそうな顔初めてみたわ」 「人並みの感情があってよかったよ。なんか泣けてきたわ」  そんな言葉まで飛び交うほど。 「叶衣、綺麗だね。散々子供っちの誕生日プレゼントもらっちゃったし、早くお祝いしてあげたいわ」 「まだ挙式も終えてないのに気が早いって」 「だって嬉しいじゃない。あんなに素敵な旦那さん捕まえてさ、なにより叶衣が幸せそうだし」  きゃっきゃとはしゃぐ叶衣の友人達。自分達の挙式への参加も、出産祝いも駆け付けてくれた叶衣に、自分のことのように嬉しく思う。  蓮の浮気が発覚したばかりの頃には、叶衣も友人達には子育てもあり、大変な中気を遣わせるのも嫌だと思い、相談しなかった。  しかし、璃空との交際が安定すると、しっかりと真実を語り、璃空のお陰で立ち直れたこと、今はとても幸せだということを伝えていた。  秘密だらけの蓮と七海とは違い、真実を受け入れ、本当に祝福してくれる友人や職場仲間だけが集まった結婚式。  璃空も叶衣も今1番幸せなのは自分達に違いないと思えた。  披露宴会場は、スクリーンに包まれ薄暗さが目立つ。さきほどの絶景の後だけに、皆キョロキョロと辺りを見渡す。それでも気分はお祝いモードのため、友人同士だったり会社仲間だったり仲の良い者同士で挙式の話でもちきりになる。  そんな中、七海は人がバラけたところでぐんっと蓮の腕を引いた。急にかかった力に、足がもつれ、驚いて七海を見つめた。 「ねぇ、さっき叶衣に見とれてたでしょ」  冷たい声が聞こえ、血の気が引く蓮。まだ気持ちがあるのを悟られるのはまずい。そう思う蓮は、あからさまに怪訝な表情を浮かべて「なに言ってんの?」と知らぬ振りを通した。 「じっと見つめてたじゃない!」 「見るでしょ。挙式なんだから。参加しといて注意散漫な方が失礼だよ」 「それにしたって見すぎだった!」 「子供達を見てたんだよ。可愛かっただろ」  さらっと誤魔化した蓮の言葉に反応する七海。眉をくいっと上げて「子供に興味あるの?」と尋ねた。  蓮は軽く息をつく。叶衣の大きいお腹を見た時、璃空の子供だとわかっていても想像せずにはいられなかった。あのまま自分と結婚していたら、今頃お腹の子は自分の子だったのに。璃空と体を重ねることもなかったのに、とありもしない未来を思い描いた。  子供達に囲まれて幸せそうな叶衣の姿。純白のドレスもあり女神のように見えたその姿に、昔漠然と想像した理想の家庭が見えた気がした。
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