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「当たり前だろ。俺だって自分の子が生まれたらどんなだろうなって想像くらいするよ。周りは子供がいる友達だって多いんだから」
蓮と七海の挙式ではほとんど子供の出席がなかったにも関わらず、本日は子供の数が多い。披露宴会場にはキッズスペースまで設けられていた。
叶衣の仲の良い友人達が皆子持ちだからというのもあるが、子供のことを気にせず出席してほしいという叶衣の配慮でもある。
ベビーシッターも控えており、授乳室も会場の近くに用意してあった。
「……そう」
七海はふと考える。
……子供ね。ふーん。
お義母様の様子だと、まだ蓮に事務所を明け渡す気はなさそうだし、向こう側数年間は今みたいに多忙な日々が続きそうだわ。
どうせ好きな仕事も回してもらえないなら、いっそのこと子供でも作って蓮が事務所を継いでから復帰する方がよさそうね……。
蓮との新婚生活を夢見て暫く子作りするつもりなどなかった七海だが、蓮が子供に興味がありそうなことと、思い通りにいかない義母の思惑を覆したい七海はすぐにでも子供を授かってもいいか、と考えを改めた。
「ねぇ、蓮。私達も子供を作りましょうよ」
唐突な言葉に蓮は吹き出す。
周りはざわっと少しどよめく。
「おまっ、こんなところでなに言ってんだよ」
こそっと小声で蓮が言う。人目もはばからず発言を気にしない素振りの七海に頭を抱えたい蓮。
「だって子供達、可愛かったじゃない。私も蓮に似た可愛い子供が欲しいわ」
にっこり笑って言った七海に、周りは無邪気なお嫁さんねなんてほっこりする。
蓮はそんな七海に顔をしかめた。
今まで子供が欲しいなんて言ったことなかっただろ? なんなら、2人だけの時間がなくなるから今はいらないくらいのことを言ってたはずだ。
なにを考えてる……? 子供を作ってどうする気だ? 仕事を休むつもりでいるのか……いや、仕事に対しては誰よりも執着してるはずだ。
なら叶衣の姿を見て母性本能が芽生えたか?
ないだろ……。まあ、いずれにしても子供が出来てそっちに神経が集中してくれればそこまで俺に構うこともなくなるか。子育てのことは母さんに聞けって一任しちゃってもいいしな……孫ができたとなれば母さんも張り切るだろうし、七海に対する態度も改善するかもしれない。
案外いい案なのか? なんて考え始める蓮は、それもありだなと密かに頷いた。
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