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蓮は軽く息をつき、「そのことは家に帰ってからゆっくり話そうよ。今日は俺達、新郎の家族としてきてるんだから」と言った。
余計なことを言わず、新婦家族として役割を全うしてくれた璃空と叶衣を思えば今日の式を台無しにするわけにはいかなかった。
璃空が機嫌を損ねれば、蓮と七海の悪行を両家に暴露される可能性もあるのだ。そんな面倒事はごめんだと蓮はそっと目を閉じた。
全員が席についたところで、新郎新婦が登場した。挙式の時同様のウェディングドレス。会場が変わるとまた雰囲気が違って見えた。
子供達に囲まれていた挙式とは違い、しっとりとした大人の佇まいに蓮は胸が高鳴った。
……綺麗だな。
目でじっと追いかけてしまうほど釘付けの蓮。薄暗い空間が、シックに見せた。
しかし、璃空と叶衣が着席したと同時にスクリーンが上がり、一面ガラス張りの窓には青空と海が広がっていた。大きな範囲で一望できる絶景に、ゲストは思わず腰を浮かす。
うわぁっと感動の声を上げ、更に会場は盛り上がった。
新郎新婦紹介では、進行役がエピソードを語る。
「新郎、璃空さんと新婦、叶衣さんは友人、蓮さんの紹介で知り合われたそうです。友人としての期間を過ごす内に、お互い惹かれ合ったお2人。現在、お2人の愛のキューピッドである蓮さんは璃空さんの妹さんと見事結ばれ、お互いに幸せを築くことができたそうです」
蓮や七海のことがスピーチされ、顔を強張らせる2人。内容を知っている叶衣側の友人達はじっとりと陰湿な目で蓮を見つめるが、主役の2人はしれっとしている。
すっかり愛のキューピッド扱いの蓮と七海。
新郎挨拶では、璃空から「本当に2人には感謝しています。叶衣さんとこうして共に素晴らしい日を迎えられたのは、2人がいたからこそです」という言葉も受け、あながち嘘ではない事柄にごくりと息を飲んだ。
蓮の浮気がなければ、璃空と叶衣が結婚することはなかった。七海がいなければ、浮気に発展することはなかった。
その複雑な関係性が今、璃空と叶衣を幸せの絶頂へと導いたのだから全く感謝していないわけでもなかった。
濃緑のエレガントなカラードレスに身を包んだ叶衣がお色直しで登場すれば、さきほどまでの雰囲気とは異なりまた会場は恍惚な表情に包まれる。
普段の明るい叶衣の印象は息を潜め、大人の魅力と艶やかさを引き立てるドレス。叶衣の魅力を知り尽くしたかのような演出に、ゲストは皆魅了され、プランナー達は思わずぐっと拳を握った。
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