【コミカライズ原作】相談先、間違えました

華やかな結婚式

　新郎新婦との写真撮影や、璃空や叶衣の友人達による余興も場を盛り上げた。中でも璃空の職場仲間が作った動画はわずか5分程度のものであったが、巧みな動画編集技術と適切な動画選択によりクオリティの高い動画となっていた。璃空と叶衣がお色直しの後に着席したところで始まった動画。

　内容はかちっとスーツ姿で固めた仕事中の璃空と叶衣が両サイドで動くところから始まる。職場仲間がこっそり仕事中の2人を撮影したものだった。
　ドラマのワンシーンのような場面から始まる演出に、なにも知らされていない璃空と叶衣は顔を見合わせた。真剣な表情でクライアントとの予定を確認する璃空と、明るい笑顔で新作のプレゼン練習をしている叶衣。しっとりとしたBGMが流れる中、食事会の会場が写し出され、2人が出会ったことが示唆される。
　お互い、1人ずつ別の角度から撮影され、2人で一緒に映る場面はエンディングに近付くにつれ、少しずつ増えていく。
　璃空の勤める事務所に挨拶へ行った場面、初めて瞳を紹介した日の映像が綺麗に使われていた。
　美しい横顔の2人の写真が両サイドで向き合い、コマ送りで目を閉じて額をくっつけて笑い合う。
　こんなところ、誰かに見られていたかなと思わず本人達が赤面するほど。
　しかし、会場はすっかり感動に包まれて、美しすぎる新郎と新婦の尊い姿に涙を溢す者さえあった。

　叶衣は真っ赤になった目に滲んだ涙を指の腹で拭い、それを見た璃空が優しくハンカチで頬を押さえた。
　その様子にまたゲスト達も幸せをお裾分けしてもらった気分になる。

　そんな感動の中、更に驚かされたのは、その次の動画である。突然写し出された女性の姿に、会場はどよめいた。

「璃空さん、叶衣さん、ご結婚おめでとうございます」

　圧倒的なビジュアルで、笑顔を見せて両手を振る守屋奏の姿。

「え？　かなんせ？」

　会場はざわざわと騒がしくなる。叶衣の職場仲間さえ、なぜこんなところにかなんせが？　と前のめりで動画を見る。

「雪永製菓さんにはいつもお世話になっています。璃空さんが発案したタルトも、時々作って食べてますよ！　ビジュを見ると、2人の愛の形が世の中のチョコレートファンを元気付けているんだなぁと思うようになりました。
　……璃空さん、叶衣さん、これからも末永くお幸せに！　そして兄をよろしくお願いしますね！」

　再び手を振って動画が終了する。唖然とする会場と叶衣。
　律だけはおかしそうに笑いを堪えていた。

「ビジュ売れたの、私のおかげじゃない？」

　そう鼻を高くしていた奏。直接律の友達からお礼くらい言ってもらいたいわ！　と憤りを顕にしていた奏に律は、彼氏と友人から同時に裏切られた叶衣の話を聞かせた。
　ようやく結婚式が決まったこと、事情によりその夫婦も出席すること、これ見よがしな披露宴を叶衣の前で見せつけたことを追加すれば、「ちょっとりっちゃん。そのいけすかない夫婦の鼻っ柱をへし折ってやろうじゃない」とノリノリの奏が自らメッセージ動画を提供したのだった。
　式の1週間前に璃空へ説明し、急遽組まれた演出。璃空と律以外は誰も知らないサプライズだらけの披露宴となった。