子供は誰の子……?

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子供は誰の子……?

 蓮は書斎のパソコンに向かってほうっとうっとりとした吐息をついていた。指先で画面をなぞり、折々口角を上げる。2ヶ月前に行った璃空と叶衣の結婚式。  新郎新婦と並び家族写真を撮った。真ん中に並ぶ璃空と叶衣。そして、その1ヶ月前には蓮と七海の結婚式の写真も撮った。  当然そこに写るウェディングドレス姿の叶衣とタキシード姿の蓮。2枚の写真を加工し、1枚の画像を作り上げた。  蓮の隣で満面の笑みを浮かべる美しい叶衣。隣にいたはずの璃空と七海を削除すれば、まるで蓮と叶衣の結婚式のようだった。 「あー……可愛いなぁ……俺の奥さん」  そう口に出して言えば、本当に七海と叶衣が入れ替わったような気分になる。  職場のデスクには、七海との結婚式の写真が飾ってある。仕事の合間に写真を見つめれば、「蓮先生、また七海先生のこと見てるんですか? 家に帰っても仕事でも会えるのに、新婚さんは熱いですね」など他弁護士にからかわれたりもする。  大野家が経営する事務所なだけに、大野先生が大勢になってしまうため、皆下の名前で呼んでいた。  蓮の視線の先には、当然璃空と共に写る叶衣の姿。ぼーっと見とれていれば、周りは仕事で事務所を空けている妻の帰りを今か今かと待っているように見えた。  しかし、七海に対して特段優しい声をかけるわけではない蓮を、本当は大好きなくせに本人を前にしたら素直になれない夫だとも思わせた。  事務所の写真では満足できなくなった蓮は、夜な夜な加工写真を見ては恍惚の表情を浮かべるのだった。  叶衣の子供はもうすぐ産まれるはず。挙式以来璃空にも叶衣にも会っていないが、無事に産まれれば会いに行くことになるだろうと、今から心弾む。  早く会いたいなぁ……。  そう思っているところにコンコンとドアをノックする音が響く。返事をする前に開いたドア。 「蓮、仕事片付いた?」  顔を出したのは七海だ。やはり写真は写真であって嫁が入れ替わるはずなどない、と現実を見てがっかりする。 「まだ、もうちょっとかかる」  パソコンには蓮と叶衣の写真。他にも付き合っていた当時、一緒に撮った写真が何十枚も入っている。そして、そのパソコン画面の向こう側には本物の妻の顔。  そんな状況でも全く表情を変えない蓮は、とても自然にそう言った。 「ねぇ、一旦中断してこっちこれる?」  七海の声に蓮はぐっと目頭を押さえた。頭痛がしそうで、顔はめんどくさいと歪む。
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