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近付いてくる気配を感じて、蓮は叶衣との写真を閉じた。デスクトップ画面に切り替わる。
「わかった、わかったよ。ここはダメだ。仕事の関係書類がある場所にプライベートは踏み込ませたくない」
蓮は降参、といった具合に両手を上げ、その重たい腰を持ち上げた。
叶衣との思い出が詰まるパソコンに、七海を近付きさせたくない蓮は、書斎にも入って欲しくはないのだ。
「たまにはいいじゃない」
そう言ってタンクトップの裾を捲り上げる七海。
蓮はそんな七海の両肩を触ってくるりと向きを変えさせる。
「だめだ。ここはダメ。スルならベッドね。子作りは健全な場所の方がいい」
そう言って七海の背中を押す。階段を挟んだ向かい側となる寝室に七海を入れれば、すぐにタンクトップを脱ぐ七海。セクシーランジェリーが顔を出し、ほとんど透けているその下着に視線を移す蓮。
うーん……。セクシーなら起つってわけじゃないんだよなぁ……。
目を閉じて頭の中でさきほどまでの叶衣の笑顔を思い出す。無邪気で可愛い、素直な叶衣。毎回、会う度にセックスばかりしていたと叶衣は言ったが、会う度に抱きたくなる魅力が叶衣にはあった。
恥ずかしそうに顔を隠したり、赤面したり、声を抑えたり。そんないつまでも初々しい姿が可愛かった。
性に奔放で、夢中になれるセックスができる七海も適度なスパイスにはなった。しかし、自分の体に自信満々で見せ付けるように、明るい室内で惜しげもなく下着姿になる態度に今さら興奮もしない。
さっさと終わらせて寝かせよう。どうせ七海だって疲れてんだから、1回や2回すりゃ満足して寝るだろ。
そんな気持ちで服を脱ぐ蓮。維持している肉体美が現れ、七海はごくりと喉を鳴らす。この美しい筋肉が堪らなく好きなのだ。
七海に覆い被さり、叶衣の思い出を重ねる蓮。時折水色の下着が脳裏を過り、気分が悪くなるが、なんとか払拭させ七海に触れる。
「電気消していい?」
「どうして? せっかく蓮好みの下着を着たのに。脱がすことができるのは蓮だけなのよ?」
「うん。でも、今日は暗い方がいい」
顔が見えない方が集中できる。だって、4日目だぞ。顔見てたら、無理。起たない。
そもそも、そんなにその下着は好みじゃない。
その言葉をぐっと堪えて勝手に電気を消した。
「もう、蓮ってば。もう少し雰囲気を楽しむのも大切よ。ガツガツしちゃって、いやね」
クスクスと笑う七海。まさか、叶衣を想像しながら抱かれているなどとは思いもしない七海は、蓮の子供を授かる日を夢見て夜を満喫した。
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