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俺と叶衣の子供を目の当たりにすれば、少しは現実に目を向けるかもしれないと考える璃空。親の名前をとって子に授けることもある。
舞が言ったように、自分の名前が子供に入っていれば、自然と璃空の子供だと主張できるような気がしたのだ。
「ずるいってなに? じゃあ、璃空の漢字入れる?」
タイミングよく笑いながらそう言う叶衣。思ったよりも嬉しそうな叶衣に、自分の漢字を使うことを喜んでくれるのかと璃空も嬉しくなる。
「入れる。そうする」
二つ返事をした璃空に、大地と舞は顔を見合わせた。自分達が第一子を授かった時にも散々名前をどうするかと悩んだ時のことを思い出した。
颯真が生まれてからもうすぐ2年が経とうとしている。既に4人目を欲しがる大地と璃空が重なって見えて、やっぱり兄弟だなぁと舞はクスクスと笑う。
「璃空ちゃんの字でも叶衣ちゃんの字でもいいんじゃなぁい? どっちの漢字も素敵よ」
ふんわり笑う舞に、璃空も叶衣も候補が見つかりそうな気がして顔が綻ぶ。
璃人、叶多、璃、優叶などなど意味や漢字を考えながらいくつもの候補をあげた璃空。
散々悩んだ結果、「やっぱり両方入れる」と言い出した。璃空の名前も叶衣の名前も入っていれば、まさに2人の子という気がしたのだ。
ほんの些細な蓮に対する反抗。ただ、その名前を一生背負って生きてくれるのは嬉しいと思えるのは事実だった。
「決まった。璃叶であきとにする」
ふんふんと満足気に頷く璃空。何十もの候補を蹴ってきた璃空にとってはとてつもなくいい名前に見えた。
「あら、字面だけみたらただのカップリングね」
さらりと義姉がそんなことを言う。じとっと目を細め、無言でなにかを訴える璃空。
「別に悪いなんて言ってないじゃない、ね、璃空ちゃん」
芽依を抱っこし、にっこり笑う舞だが、こんなにも表情が乏しい璃空から叶衣に対する愛情が溢れんばかりに感じられて、笑いを堪えるのに必死なのだ。
両親の名前を両方入れてしまおうなんて考えるのだから、T大卒業生も愛する奥さんの前ではただの男の子ね、なんて微笑ましくもなる。
「私は好きだよー。あきとくんね」
そんな中、その場を救うが如く満面の笑みを浮かべる叶衣。叶衣がいいならそれでいいんじゃないか、全員がそう思った。
「叶と空で叶空なんて子もいるらしいよ」
大地が颯真を左腕で抱えて体を揺らしながら、右手でスマートフォンをいじる。名前検索をした画面を見ながらそう言った。
「とあ! 今時! さすが令和!」
目を丸くした叶衣がそう言い、「おじいちゃんになって、とあさーんって病院で名前呼ばれるの可哀想だからやめておく」と璃空が冷静にそう言った。
「その時代にはきっともっとキラキラネームいっぱいいるって」
大地はカラカラと笑う。
本当にそんな気もするが、やっぱりここは璃叶にしようと満場一致で決定したのだった。
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