どうしてこうなった

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 じっとスマートフォンの画面を見つめたままの蓮。その姿を見て、璃空は送信ボタンを押す。 『叶衣、今日休みでしょ? とりあえず迎えに行くね』  既読がつくのを確認しないままにアプリを閉じる璃空。最後の一口を喉に流し込み、カタンとコーヒーカップをテーブルに置く。 「ご馳走さま。俺、叶衣のこと伝えにきただけだから帰るね。このあと用事あるから」  そう言って璃空は立ち上がる。蓮は、放心したままゆっくり顔を上げ、じっと璃空を見つめた。 「……なに」  蓮の視線を不快に思った璃空は、表情を歪める。目一杯嫌そうな顔をした。  女顔と揶揄されるその見た目は、時に冷たく映る。美しさの裏に、淡白さを感じるのだ。 「こんな時に用事って……。今回は俺が悪いってわかるけど、もうちょっとタイミングとかあるだろ?」 「なんの? そもそも、それだけ言って釘をさしたら帰ろうと思ってたんだよ。八つ当たりしないでよ」  めんどくさい。あからさまに表情に出る璃空。それが余計に蓮を煽る。 「妹に手出したのは悪かったって思ってる。でも、俺はお前のこと親友だと思ってたよ。……そう思ってたのは俺だけなんだな」  悔しそうに下唇を噛んだ蓮。彼女に振られ、親友には冷たくあしらわれ、今の状況が恥ずかしいやら情けないやらで感情のやり場がなく立ち往生しているのだ。  そんな蓮に璃空はゆっくり瞬きをする。それから静かに口を開く。 「俺も親友だと思ってるよ。過去形でもなく。だから、叶衣のことは諦めて、蓮に譲った。叶衣が蓮のこと好きだって知ってたから」  その言葉に、蓮も律も目を見開く。まるで、もっと前から叶衣のことが好きだったという口振りだ。  しんっと静まりかえったリビングで、家電の音だけがうるさいほどに響く。 「蓮なら大丈夫だと思った。一時の感情に流されるほどバカじゃないって。でもバカだった。それだけのことだよ。今、蓮を慰めてやれるほど俺は優しくないよ。自分のしたこと考えなよ」  それだけ言って璃空は静かに椅子をしまった。それからズボンの後ろポケットに入っている財布と車の鍵の存在を確認し、蓮と律に背を向けた。  さっさと帰ってしまった璃空。見送りもできずに璃空の言葉を理解しようと頭をフル回転させる蓮。
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