どうしてこうなった

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 蓮は目を泳がす。思考がついていかないのだ。思えば、蓮よりも叶衣と連絡をとっていたのは璃空の方だ。  璃空から聞くのは叶衣のことばかり。しかし、なぜか3人でいても途中で帰る璃空。そのためにマイペースなヤツだ、いつものことだと思ってやり過ごしていた。  それが蓮と叶衣を2人きりにさせる璃空の計らいだとは微塵も感じていなかった。 「じゃあ……璃空が叶衣を口説いたのって本気なのか?」 「じゃないの。知らないよ。俺にしてみればかな……えが蓮と付き合おうと璃空と付き合おうとどっちでもいい」  叶衣という名前をいい間違えそうになり、律はめんどくさいとまた思う。律の妹である(かなで)。名前が似ていて母音が同じ。自分と璃空のようだと思った。  性格は正反対の叶衣と奏だが、似た名前は言いにくいったらありゃしない。  そんな意識がそれた律に、むっと顔をしかめる蓮。 「どっちでもいいって……本当に興味ないんだな」 「興味ないとかじゃなくて。叶衣が幸せだって思えるなら、相手はどっちでもいいって話。蓮にはそれができなかったんだからしょうがないじゃん。終わった叶衣のことより、これからの浮気相手とのこと考えなきゃじゃないの」  終わった。そう律から言われれば、ようやく実感する。  ああ、別れたんだ。  こんなにあっさり。  2年も一緒にいたのに。  七海との関係は半年間に及んだが、叶衣との別れは一瞬でやってきた。    瞳を揺らして立ち竦む蓮の隣をすっと通り過ぎる律。同じくらいの身長の律の黒髪がさらりと揺れる。  鼻が高く、横顔のシルエットが美しい。ただ、璃空同様に冷淡さを感じる。  普段なら、璃空と律の淡々とした物言いが心地よくもあるのだが、今はただ蓮を責め立てているように聞こえた。  1人きりになったリビング。未だにコーヒーの香りが残る室内。人の気配が減った侘しさが広がる。  どうしてこうなったんだっけ。蓮は残された自宅でしゃがみこみ、頭を抱えた。
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