尻拭い? いやいや、略奪です

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 あからさまな態度が気に入らない七海は、立ったまま腕組みをしてカウンターに寄りかかっている璃空をキッと睨み付けた。 「じゃあ、どんな女なら浮気されないわけ!?」 「知らないよ。そんなの、男次第じゃないの」 「なんなの! 男次第って! そもそも、蓮と付き合えてたらこんなことにはならなかった!」  そう言って、七海は持っていたスマートフォンをソファーの上に叩きつけた。  その姿にため息をついて目頭を押さえる璃空。 「またその話……」 「だって、先に蓮を紹介してもらったのは私でしょ!?」  3年前、T大の同窓会で話題になったミスターT大である蓮。お近付きになりたかったわぁと皆の憧れであった蓮の話を聞いた。当時、ヒモと化した男と別れたばかりだった七海は、本当に自分に相応しいのは蓮なのではないかと勝手に思い込んだ。  在学中から蓮のことは知っていたが、当時は同い年のミスT大と付き合っていたために、異性として意識したことはなかった。  今頃どうしているのかと気になり始めればずっと気になってしまい、確か璃空が仲良かったはずだと紹介をせがんだのだ。  連絡先を入手したものの、既に別の彼女がいた蓮。こちらから連絡をしようとも友人の妹という立場にあった七海に必要以上の返信はなかった。  今まで、色んな男から猛烈なアプローチを受けてきた七海。自分から率先して男を追いかけることはなかった。  いつも男の方から寄ってきて、気付けば自分の方が夢中になっている。  これだけの経歴を持った女ががっつくなんて、プライドが許さないと意地でも自分からアプローチなどしてこなかった。  蓮自身が自分と同じレベルで付き合えるのは七海くらいだと気付いてくれさえすれば、ビッグカップルの誕生であり、絶対に上手くいくはずだと信じて疑わなかった。  それでも告白は蓮からがいいと自分の魅力を押し出して近付いた。彼女と別れた瞬間を狙って、食事に誘い、飲みに誘い、多くの時間を共に過ごした。  しかし、2年前から急に付き合いが悪くなり、半年経った頃には蓮に彼女ができていた。どんな女かと思えば、それは親友の叶衣だった。  叶衣との付き合いは楽だった。「美人! 綺麗! スタイル抜群! サバサバ女子最高!」と持ち上げてくれるのが嬉しかった。  恋愛についても叶衣にだけは相談していた。蓮のこともだ。  最近好きな人がいて、決定的なアプローチはしていないが、少しずつ距離は近付いている気がするとはしゃいで話していた。  職業も年齢も、兄の友達とも言っていたはずだ。それなのにまさか叶衣が好きだった人と同一人物だとは思わなかった。
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