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叶衣はぎゅっと目を瞑ったまま、考える。
何とかして止めさせなければ。思い付く限りの理由をぶつけて、璃空を制止させなければ!
まるで爆弾処理班のように、タイマー解除に当たるキーワードを探す。叶衣の頭の中には白、黒、赤、黄、ピンク、緑のコードが並ぶ。
「璃空、待って。落ち着いて」
かっと目を見開いて、薄暗い部屋の中でその美しい顔を見つめる。
まずは黒コード。
「私、Bカップだよ? 七海みたいにおっぱい大きくないの。寝てたらさ、もうぺったんこ」
「そう。それってそんなに重要なの?」
可愛らしく小首を傾げる璃空。黒コードは不発である。しかし、タイマーも止まらない。
次は緑にしよう!
「私、マグロだし」
「いや、もっと断る理由あっただろ」
顔をしかめる璃空。爆弾から変な音がした。気がした。
次はピンク!
「私、セックスでイったことないし! だから璃空もつまんないと思う!」
「そうなの? じゃあ……頑張る」
ふと視線を逸らしたかと思うと大きく頷いた璃空。
これはやばーい! さすがピンクコード!
地雷です! タイマーが速くなる。
じゃあ、白! 純白の白!
「私、あんまりセックス好きじゃないかも……」
「でも、蓮とは会う度セックスばっかりしてたって言ってたよね?」
璃空はふふっと口角を上げる。
これまた地雷ワード! タイマーが残り5秒になった! まずい!
残るは赤と黄色! 大体こういう時って、赤が爆発するやつだよね!?
どっちだ、赤か! 黄色か! 絶対、安全なのは黄色!
「私……やっぱりまだ蓮ちゃんのこと忘れられない」
口元を押さえたまま叶衣が言えば、ピクリと動きを止める璃空。
……成功か?
「それはしょうがない。まだ、叶衣の中では蓮が1番でしょ?」
「え? あ、うん……」
「体にいつまでも蓮の記憶が残ってるから忘れられないんだよ。大丈夫、俺が忘れさせてあげるから」
天使のような笑顔を向けられた。
それと同時に髪に1つキスが落とされる。
ドッカーン!
どうやらコードを間違えたようだ。考えてみれば、デンジャーマークはいつだって黄色だ。
璃空の大きな手が伸びてきて、叶衣の口元を押さえていた腕を掴んだ。そのままベッドに押さえ付け、璃空の唇は叶衣の左頬へ押しあてられた。
「ね、璃空……待ってよ」
「もう、待てないよ」
今度はしっかりと長い指で顎先を捉えられ、唇が重なった。
ああ、まさか璃空とキスする日がくるなんて……。
想像もしていなかった事態にどうしようか、とりあえず冷静になれないかと再び思考回路を作動させる。
けれど、歯列を割ってあっさり侵入してきた璃空の舌は、叶衣の舌の上を這っていく。たっぷりと唾液が絡まって、ねっとりとした感覚が広がる。
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