プロローグ

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プロローグ

 (れん)はスマートフォンに手を伸ばす。深い闇と化した暗い寝室の中、手探りで目的のそれを探す。何度かベッドのスプリングを叩いてようやく手中に収まったそれを点灯させた。  画面は23時46分を表示している。時間だけを確認した蓮は、再びスマートフォンの電源ボタンを押した。途端にまた暗闇に吸い込まれる。  左に体ごと向きを変えると手を伸ばした先には、人肌があった。適度に鍛えられた細い腕。その向こう側にある膨らみを掌で包み込んだ。 「ねぇ、もう1回するの?」 「んー、しないよ。触るだけ」 「そう言っていつも我慢できないでしょ」  肩を震わせてクスクスと笑う七海(ななみ)。誰もが認める美女だ。ミスT大の肩書きは伊達じゃない。頭脳明晰、容姿端麗、品行方正。そんな四文字熟語は七海のためにあるようなものだと蓮は思う。 「俺、七海の胸好き」 「叶衣(かなえ)は貧乳だからねぇ」  何の悪びれもなく彼女はそう笑う。蓮もつられて笑いながら、七海の張りのある胸の膨らみをそっと掴んだ。手の中で形を変え、張りと柔らかさとを同時に感じる。  冷たいシーツの中でぴくりと反応する七海の姿に、蓮もまた反応する下半身に気付く。 「七海、やっぱ起ったわ」 「ほらー。もう性欲強いのも困りもんね」  そういいながらも、七海の声は甘ったるいものに変わっていく。自慢のEカップを惜しげもなく揺らしながら蓮の指に誘われ、体を預けた。  情事後、さっさと服を纏う蓮を横目に「泊めてはくれないの?」と口を尖らせる七海。一時的にオレンジの常夜灯に包まれる室内で、鍛え抜かれた背中の筋肉が美しく浮かび上がる。  肩甲骨を内側に寄せて、上からTシャツが被された。 「泊まりはダメだって。叶衣には家でおとなしくしてるって言ってあるんだから」 「ふーん。でも、飲み会だって言ってデートキャンセルしたのは叶衣の方でしょ?」 「まあ……な。役職就いてると、色々あんじゃないの?」 「キャリアウーマンはお互い様だけど」  七海は床に散らばった黒のパンティを摘まんで、足を通した。緩んだサイドの紐を結び直してからブラジャーにも手を伸ばす。  休みなく働いているのは、こちらも同じだと不服そうな顔でホックを嵌めた。 「叶衣の前でそんな顔するなよ」 「わかってる。ねぇ、ちゃんと好きなの?」  既に着替えを済ませた蓮の後ろ姿に問いかける。ベッドサイドに置かれたペットボトルを手に取り、ミネラルウォーターを喉に流し込んだ蓮は「まあね。来月記念日だし」と言ってそのペットボトルを七海に渡した。
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