視えないモノ

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「あんた、インチキだろ。あいつには、何も取り憑いちゃいない」  そう問い詰めると、師匠は表情を変えずに頷いた。 「ほう、お前にも分かるのか」 「な、分かってて金取ったのかよ」  師匠は悪びれる様子もなく、ニヤリと笑みを浮かべた。 「ああいうのはな、気持ちの問題なんだ。下手に本当のことを話してやるより、それっぽいことをしてやった方が安心するんだよ。それで私も儲かる。お互い、得しかないじゃないか。何が悪い?」  俺は何かを言い返したかったけど、除霊をされた後の友人の晴れやかな顔を思い浮かべると、何も言えなくなった。 「それより、お前。せっかく視えるのなら、お前もこの商売をしてみるといい。いい金になるぞ。なに、〔本物〕が来たときは、他を当たれと突き返してやればいいんだから、気楽な商売だぞ」  その当時、俺は就職活動に失敗して安い時給でアルバイトをしていた。そのこともあり、師匠の話に乗ってしまった。  しばらくは師匠の弟子として除霊の〔それっぽい〕やり方を学び、それから独立して今のように商売をしている。師匠から聞いた通り、まさに濡れ手で粟のボロい商売だ。
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