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2異変
紫陽と隼瀬あきら以外のクラスメイト全員がスマホを持っている。その事実に気付いた紫陽だが、そのことを気にすることはなかった。自分は自分、他人は他人である。
あやのが言うようなクラスメイトからのつまはじきや孤立といったことは起こっていたが、それを寂しいと思ったことはない。紫陽は相変わらず、昼休みは一人で弁当を食べ、移動教室も一人で行動していた。
幸いなことに、物を隠されたり、話しかけても無視されたりといったいじめは起きていない。学校生活での不都合はなかったので、紫陽からクラスメイトに何かするということはなかった。あやのが時々話しかけてきたが、適当にやり過ごし、紫陽は平穏な学校生活を送っていた。
同じような目にあっているだろう隼瀬あきらも、紫陽と同じで、クラスメイトに自分から行動を起こすことはなかった。
人類の歴史が変わることになったGW明けが訪れる。
紫陽はいつも通りに学校へ登校する。GW明けでいまいち学校へ行くのにやる気が出なかったが、仕方ない。今日からまた学校が始まるので、高校生の紫陽は学校へ行かなければならない。
教室に入ると、何人かのクラスメイトがスマホを片手に騒いでいるのが目に入る。自分の席に着いた僕は何をそんなに騒いでいるのか気になり、騒いでいる集団近くにいた生徒に話しかけた。
「おはよう。朝から何をそんなに騒いでいるの。面白いニュースでもあった?」
「鷹崎か、みてみろよ。あれが本当だったら大ニュースでマスコミが騒ぎそうだ。」
「そうだよ。だって、スマホが手から離れないなんてありえないでしょ。それに本人曰く、手に合体して取れないなんて言うから、面白すぎて。」
興奮し様子で集団の中心を指さすので、つい好奇心からその噂の張本人を確認してみることにした。
彼らの言っていることは本当のようだった。遠目からはスマホを片手に持っているようにしか見えなかったが、近くで見ると様子がおかしい。スマホを持っているように見えたが、実際はそうではなく、本当に手と合体しているように見えた。
「き、きのうの、よ、よるにスマホで、ゲームして、そのまま、ね、ねおちして、たみたいで……。あ、あさおき、たら、て、てからスマホ、がはなれなく、て……。」
手にスマホが合体して離れなくなってしまった生徒は、泣きながらクラスメイトに訴えていた。一生懸命に手からスマホを外そうとしているが、うんともすんともいわない。
そうこうしているうちに、朝の予鈴のチャイムが教室に鳴り響く。クラスメイトは興奮冷めぬままに各自、自分の席に着く。紫陽も彼らと同じように自分の席に着く。
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