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暗殺者 エレノア
ぽたり、ぽたり――鈍色の刃物から滴り落ちる赤。
薄暗い路地裏で、肩と胸が大きく開いたドレスの少女は無感動に虚空を見ていた。
その足元には、刃物を染めた赤と同じ色が転がっている。
少女・エレノアが所属する暗殺部隊のターゲットだった。
既に彼女の手によってただの肉塊と化した男は、あるマフィアの金庫番だったらしい。
「はー、だる。何が悲しくてこんな娼婦みたいな格好をして先輩の尻拭いをしなきゃいけないんだよ……」
無感動な声と小さく吐かれたため息。
腕も足も露出し、胸元も開いているドレスはまさに娼婦の格好だ。
「おい、聞こえてるぞエレノア。ふざけんなよ、オレのせいじゃねーし。ターゲットに逃げられたのは」
ターゲット……マフィアの金庫番をしていた男は、資金に手を付けて追われていた。
その男を追っていたのがエレノアの先輩にあたる暗殺者、メフィストだ。
「ちっ……メフィスト先輩」
「おい、舌打ち聞こえてるからな!」
「はー、めんどい。うざっ」
いちいち突っ込んでくるメフィストに聞こえないよう、どんどん声のボリュームを落としていく。
先程、エレノアは尻拭いと言ったが、メフィストは一度男に逃げられていた。
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