暗殺者 エレノア

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 エレノアはナイフを引き抜くと、抜き身のままクルクルと回し始めた。  鋭利な刃が彼女の指と掌の間で踊る。 「人を探してるんですよ。勝手にいなくなったアホな師匠を、ね」  エレノアは言いながら、ナイフを投げてキャッチした。  その際に刃先が皮膚を少し掠めたのか、掌に一筋の赤が走る。 「おまっ、また傷作ったな!」  小さな傷からじわりと出てきた血液を見て、メフィストは彼女の手を取った。  丸く膨れるように溜まった赤い雫が零れる前に舌を這わせる。 「うぇ……」  エレノアはそんなメフィストの行動に心底嫌そうに顔を歪めた。  しかし、手を振り払うことはせず、行為自体は受け入れている。 「お前の師匠って何者なんだよ」 「あー、一言で言うと『変態』ですね」 「……オレ、お前の師匠がお前の前から姿を消した理由がわかる気がするわ」 「上から目線うざいですよ」 「ほら、そう言うとこだよ!」  歯に衣着せぬ物言い。  言葉に含んだ毒は、少しずつ少しずつ相手の心を蝕んでいく。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加