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エレノアはナイフを引き抜くと、抜き身のままクルクルと回し始めた。
鋭利な刃が彼女の指と掌の間で踊る。
「人を探してるんですよ。勝手にいなくなったアホな師匠を、ね」
エレノアは言いながら、ナイフを投げてキャッチした。
その際に刃先が皮膚を少し掠めたのか、掌に一筋の赤が走る。
「おまっ、また傷作ったな!」
小さな傷からじわりと出てきた血液を見て、メフィストは彼女の手を取った。
丸く膨れるように溜まった赤い雫が零れる前に舌を這わせる。
「うぇ……」
エレノアはそんなメフィストの行動に心底嫌そうに顔を歪めた。
しかし、手を振り払うことはせず、行為自体は受け入れている。
「お前の師匠って何者なんだよ」
「あー、一言で言うと『変態』ですね」
「……オレ、お前の師匠がお前の前から姿を消した理由がわかる気がするわ」
「上から目線うざいですよ」
「ほら、そう言うとこだよ!」
歯に衣着せぬ物言い。
言葉に含んだ毒は、少しずつ少しずつ相手の心を蝕んでいく。
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