0人が本棚に入れています
本棚に追加
我は征く。
冥府にただ一人、あちらとこちらを繋ぐ者。
『船を出せ 死者を乗せろ 審判の場へ 我が王の元へ』
冷たい川に、冷たい亡者。
オボロスを一枚。無賃乗船など赦しはしない。
『船を出せ 死者を運べ オボロス貨が無いものは 冷たい川でただ待つのみ』
冥府を統べる我が王よ。漆黒の中にぽかりと浮かぶ大きな眼を持つ我が王よ。
「闇き冥府に見目の善し悪しなど無意味。あるのは魂の象、それを以て裁くのみ」
美醜に取り憑かれた天の神々よ。
嗚呼、愚かなり!冥府は昏く、闇いが故に美醜など無意味と我が王は仰せだ。美醜に囚われて心を喪った者どもよ。冥府はどんなものでも等しく受け入れる。我が王がそれを赦す限り――
我が名はカロン。
おぞましきも誇りある冥府の渡し守。
最初のコメントを投稿しよう!