僕の欠片 1

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いもじゃは信ちゃんが言うほど醜くないよ。 信ちゃんが醜いとか勝手に言い続けてるから、そんな気がするだけだよ。 酷いよね。あのあだ名だって信ちゃんが付けたんでしょう。 僕は可愛いって、猫可愛がりされている八森本家の次男坊。 信ちゃんにいもじゃの事を最初に褒めたのは、たぶん僕。 信ちゃんは弟の僕のことが大好きだ。 僕が褒めそやした相手には、なんだって対抗心を燃やし嫉妬する。 ある日、僕は信ちゃんの前でいもじゃを褒めた。 イイヤツだなって思う場面があったんだ。たぶん動物とか植物に優しくしてたとかね。 信ちゃんは僕が褒め認めた相手が、とくに運動もできない、気も利かなくて面白くもなく、街から来たくせに垢抜けていない、取り柄のないように見えるいもじゃだったから余計に嫉妬した。 いもじゃには嘉之(よしゆき)ってちゃんとした名前があるのに、にきび痕がでこぼこになっていて、いもやじゃがいもに似ているからいもじゃだと。 信ちゃんが言い出して皆に広がった。先生まで一緒に言う始末だ。 この地域は八森姓の親戚ばかり。 八森姓を持っている分家筋で、他所で育ち近年引っ越してきたばかりのいもじゃには、学校や集落で通用する僕らの家である八森本家の権威や威光は通じなかった。 いもじゃは信ちゃんの嫌がらせにほとんど反応しなかったし、(もしかしたら分かっていなかった)、いもじゃ自身の反応も信ちゃんが想定していた反応ではなかった。 いもじゃの手応えの無さに信ちゃんの嫌がらせはエスカレートしていく。 周りの同級生が手を引く中、長年信ちゃんだけが一人いもじゃに固執していた。 信ちゃんは普段僕のいうことをきくのに、いもじゃへの嫌がらせを何度も止めるよう言っても、いもじゃへの執着をやめない。 いもじゃをからかい出してから、信ちゃんは変わってしまった。
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