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箪笥の中味をごみ袋につめる。
祖母の代からいもじゃまで、3世代の服がつまっていた。服だけでごみ袋の山ができた。
押し入れの隅には、これでもかというくらい、よく分からないものがつめこまれていた。
どう手をつけたら良いのか分からず、手をこまねいていると、いもじゃに声を掛けられた。
「お茶、休憩しようぜ」
「じゃ、一服してくる」
「タバコ吸うんだ」
「んっ」
縁側に座ってタバコに火をつける。
緩慢な自殺を目論んで始めたものの、無くてはむずむずするようになってしまった。
煙を口の中でくゆらせて、少しずつ吐き出す。ああ甘美だ。
「お待たせ。あ、吸い殻、携帯灰皿に入れたからな」
なんだか、いもじゃの機嫌が悪い。
睨んでいる。マナーを心配しているのか、タバコがよっぽど嫌いなんだろうか。
「二階を一緒にやろう」
いもじゃが急に言い出した。
朝の打ち合わせでは、二階は本が多くて後回しにするという話だったのに。
急に気が変わったいもじゃに付いて急な階段を登っていった。
初めて、いもじゃの部屋に入る。
適当な窓とベッド、こぢんまりとした勉強机が並んでいた。
いもじゃはここで勉強して、東京に行ったのか。
勝手に人の部屋で感慨にふけっていた。
参考書はどこの出版社を使っていたのかと周りを見渡そうとしたとき、腕をつかまれベッドに押し倒された。
両手首を抑えつけられ、腹の上に体重を掛けられた。
首筋に顔をうずめられる。
ふんわりと嗅いだことのない甘くてビターなフレグランスの匂いがした。
ひざで下半身をぐりぐりとされる。凄い久しぶりの人の体温、下腹部への刺激に緩やかに血が集まりだした。
いもじゃの肉厚的な唇で口をふさがれる。激しく吸われて息が出来ない。
「……なんで」
唇が外れた時、かすれた声で問いかけた。返答はない。
「タバコ臭い」
そう言ってまたくちゅりと口を塞がれた。さっき吸ったばかりだから、臭いに決まってる。
「なんで、タバコ吸ってんの」
いもじゃは膝で下半身を挟み押さえつけてきた。重くて簡単には動けない。
タバコを吸い始めたのは、早死にしたかったから。
でも、そんなこと、今ここで、言う必要があるのか?
それよりも押さえつけなくても、逃げないし。
「……逃げないよ」
目を見ながら伝えると押さえつけられていた手が解放された。
信用されたようだ。
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