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ちょうどその時、玄関のドアが開く音がした。廊下を歩く音が聞こえて、リビングのドアが開いた。
「ただいまー。……ああっ! ちょっと! なんでその手紙読んでるの! しかも、なんで笑ってるのよ!?」
顔を真っ赤にして叫んだのは、3泊4日の海外旅行から帰ってきたばかりの母・ヒトミだった。
後ろから、空港までヒトミを迎えにいった父・ユキトも「行ってきたよー」と言いながらリビングに入ってきた。
「お母さんお帰り……。っていうか、お母さんが飛行機怖がってるのは知ってるけど……。旅行行く前にこんな遺書みたいなの書いてたの……?」
タカトが、申し訳なさそうに笑いながら言った。
「そうだよ。飛行機怖いからって……。そんな簡単に飛行機は落ちないよー!」
そう言ったトモカは、笑いすぎて泣いている。
「だって! 怖いんだからしょうがないでしょ? それに、海外で刺されて死ぬかもしれないじゃん! ……無事帰ってきたけどっ!」
ヒトミは仁王立ちのまま力説する。
「海外旅行に行ける国だし、それに、ちゃんとした旅行会社のツアーなんだから、そんなに危険な場所に行くわけないじゃん」
ヒロトが、くっくっと笑いながら言った。
「……っていうか、その手紙、隠しておいたのに……。どうして君たちが読んでるのよ!」
「まあまあ、お母さん。疲れたでしょ? お茶淹れるから」
ヒトミの荷物を部屋の隅に置いて、なだめるように言ったユキトが、キッチンに向かっていった。
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