夢を奪う仕事

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「正解は、親です」 「親……ああ、だから、」 「そう、放任主義ならまだいい方でしょう。実際は、我が子が可能性の低い夢を追おうとしたら、どうにか可能性の高い道へ方向修正をさせたいと思う親が大半です」  笹原はその事実を、喜ぶでもなく悲しむでもなく淡々と話す。 「でも説得して夢を諦めさせるのは難しい。何より、しこりが残る可能性がある。自分で実力を思い知って諦めるのと、他人に無理やりやめさせられるのでは天と地ほどの差がありますからね。そこで、最近私たちみたいな職業が生まれたわけです」 「どうやって諦めさせるんですか?」 「簡単なことです。圧倒的に格の違う実力者に出会わせるだけですよ」 「でもそんな簡単に……?」 「うちもプロですからね。あらゆる分野の、本物の天才少年少女たちが所属してるんです」 「なるほど……」 「彼らがその道で生きていけると信じられるのは、周りと比べて自分が秀でていると感じられる状況だからです。そこへ彼らより年下の、本物の天才をぶつける。本気で取り組んでいた子ほど、一瞬で理解するんですよ。『俺は本物ではなかった』、と」 「そんなに簡単にいくものですか?」
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