株式会社ネバーランド

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ずっと、ずっと周りに合わせて過ごしていた。 息を潜めて、異質物とならないよう擬態して、周りに求められるものを差しだせるよう顔色を窺い、吸って吐くはずの空気というものを読むものに変えて、期待という見えないものに応えるようにした。 『夢』なんて持たなかった。 大人になれば機械のように動いて毎日単調な代わり映えの無い日々を過ごすことが分かっていたから。 ある程度の年齢の時にこんな職業がある、と教えられてそれを目指すことにした。 それが将来の夢だと思い込むようにして…。 少しずつ違和感を覚えていたことすら気付かないふりをしていた。 大学までは上手くすり抜けるように順調に進学してみせて、良い人を演じてきた。 それなのになかなか思うように就活が出来ずに内定を取れたのもギリギリで周りと違う事に焦りを感じていた。 就職すればそれも無くなるだろう…。 どうせロボットのようになるのだから。 けれど、あんなに同調を求められた世界は一瞬にして崩れた。 今まで築いてきた道化のような生活は人間関係をうまくやり過ごすにはどうにかなるし、仕事内容でもどの職業でも使うような内容ならある程度の「出来る」範囲にはとりあえず持っていける。 ただし、自分で考えて動かなければならない生活とそれらを両立できるやり方は教わってこなかった。 今まで誰かが許可を下すことで成り立ってきたのだから、自分の行動が合っているのかの答え合わせが無いことで次々と与えられる仕事に困惑しながら頭と体をフルパワーで動かし続ける日々。 人間関係もあっちとこっちで板挟みになるものだから間の位置で保ち続けるのは大変だった。
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