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「─子供……」
「子供?」
殆ど聞き取れずに、分かったところだけをオウムのように返した。
まさか子供が出来てとか?
でも付き合ってる人いないって言ってたし…。いや、俺が卒業してからは知らないぞ。
そもそも病気って言ってたよな?
言いたくなくて一度誤魔化したとか?
そうやって自問自答していると答えが返ってきた。
「─産め、ない、かも…なんです。」
「へ?」
想定外の言葉が聞こえてきて、思わず出た声はあまりにも間抜けだった。
ぐっと唇を噛み締めて顔を上げた彼女は、痛々しい傷を負いながらも戦場から戻ってきた兵士のような強い眼差しをしていた。
「子宮内膜症っていう病気だったんです。」
笑った顔を張り付けながら、はっきりした声で彼女はそういった。
それがどういった病気なのかは知らなかったけれど、女性の病気だという事だけは分かった。
そして、その病気が原因で手術もして、子供が産めないかもしれないということも。
「命にかかわる病気ではないんです。ただ、再発することもあるらしくて、今回病巣だけを取る手術をしたので産める可能性はまだあるんです。……けど、不妊の可能性も高いんです。」
「う、ん。」
「確かに生きていられるだけ、良かったんだと、そう…思います。でも、今まで頑張ってきたもの全部消えたん、です。」
どんどん声がか細くなっていくのに対して俺は相槌を打つことしかできない。
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