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抱きしめられる腕に力がはいり、胸の中にすっぽりと包みこまれた。
「セックスがしたいから悠歩といるわけじゃない、悠歩といるからつい求めてしまうけど、重要なのはこうしていることなんだよ」
「悠歩が何を不安に思っているのかわからないけど、そうやって不安にしているわたしにも責任がある。」
違う・・郷さんには責任は無い・・
「俺が・・・」
どうすれば、すこしでも長く一緒にいられるだろう・・
そんな不安ばかり
優しくされれば、されるほど怖くなる
「うん」
郷さんは俺が何かを話すのを待ってくれる。
こんな風に、俺に誠意を持って接してくれるのに、それすら怖いと思ってしまう。
「あの・・・何でもないです」
誰かの特別になりたいと思わない訳じゃない、でも、恋人だと思っていた人達から軽く扱われて、自分は特別じゃないと気づかされてきて、付き合ってくれるだけで、抱いてくれるだけで充分だと自分自身に言い聞かせてきた。
だから付き合ってくれる人を"好きだ"と思ってきた。
誠も酷い奴だと思っていても顔が好きだ、だから誠が好きだと思ってきた。その反面、誠の顔が認識出来なくなるとどうでもよくなった。
いつも諦めていたから、捨てられる覚悟をして溺れたりしないようにしていたし、相手もヤれればいいくらいにしか思っていなかったからこんなに俺の心に入り込んで来なかった。
誰かを愛することがこんなに、不安で怖いなんて思わなかった。
「一緒に暮らしませんか」
「!」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
郷さんの腕の中で固まっている俺に、
「使っていない部屋もありますから、そこを悠歩の部屋として使ってください」
「週末こうやって会っているだけでは、足りなくてもっと悠歩を独り占めしたい」
うれしい・・うれしいけど
「無理・・・です」
「そうですか、もう寝ましょう」
どうしよう・・・嫌われてしまったかもしれない
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