お嬢様の論理はサイコーです

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 ミリア・バーミンガム。派手な化粧に、ジャラジャラ、キラキラのアクセサリーを耳や首や腕につけ、立っているだけで目立つ。そのうえ、下品になりかねないタイトな服を着ることが多いのだが、仕立てがいいのか、なんだかしっくりと、正統なお金持ち女性に見える。  否。  実際、お金持ち。  バーミンガムといえば、株と土地売買でのし上がった一族で、現在、経済だけでなく政治にも影響力があるとかないとか噂される家なのだ。そこの一人娘。 「で、そんなお嬢様が、どーして、こんなちっさな町のローカル誌の記者やって、そんで、どこにでもいるガキんちょ追いかけ回してるんですか」  長い前髪の下から、心底うんざりした目をして、通称“サブ”は言った。この街の、どこにでもいるガキんちょだ。  サブの目の前に立つミリアは、心底驚いたように口元に手をやった。マニキュアがきれいに塗られた爪が見える。  その爪を見て、サブはいつも思うことを思った。あの爪で、記事を書くためにキーボードを叩けるのだろうか、キーを叩くたびにカツカツいって、うるさそうだ、と。  ミリアは両手を大げさに広げた。 「やあねえ、サブくん、だからこそ、じゃない」  成長期はまだ先と言わんばかりの低身長のサブを前に、ミリアはまるで姉が弟を諭すような口調になる。 「私にはお金があるのよ。父を通して、経済界や政界のあれやこれやの情報もたやすく手に入る。利用しない手はないじゃない」 「それが、あなたがこの仕事を始めた理由ってわけ?」 「お金で記事を握りつぶせるのなら、逆もしかり、お金で真実を暴くのよっ!私にはそれができる!!」  ミリアが子供相手に胸を張る。自信満々。ものすごく無茶苦茶で強引で斬新すぎる論理だと、微塵も思っていないだろう。  サブは生ぬるーい目で、鼻高々としているミリアを眺めた。 (いやまあ、この人がこういう人であることは、この人がローカル誌の記者だと言って数ヶ月前に現れたときから知ってはいる。知ってはいるんだけど、なんつーか、なあ)  サブはうーん、と悩まし気に眉を寄せた。  ほーぉほっほっほっ、と得意げに高笑いするミリアを見る。  サブは大きく息を吐いた。  でもまあ、ここまで唯我独尊的な姿勢がぶれないと、いっそ清々しいわけで。 (憎めないっちゃ憎めないんだよ)  やれやれ、とサブは肩をすくめた。  と、ミリアが思い出したようにサブの前にどーんと立ち塞がった。 「そーいうわけで、私の勘が叫んでいるの、サブくん、あなたは何か秘密を隠し持っているってね!」 「は?お金で暴くんじゃなくて、勘で動くの?」 「それはそれ、これはこれ」 「ミズ・ミリア、あんたやっぱサイコーな性格だよ」  サブは苦笑いを浮かべて脱力した。 おしまい。
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