公園将棋

1/1
前へ
/163ページ
次へ

公園将棋

現在ある公園で今日プロ棋士としてデビューしたばかりの長谷一輝と既に女流棋士としてデビューしていた牧野小夜がマグネット盤を挟んで将棋を指そうとしていた。  そして将棋特有の先手と後手を決めるための儀式が行われようとしていた。 「ここには私達2人しかいないから振り駒は私がするわ。ちょっと一輝君の歩を5枚使うわ」 「ああ、いいよ」  そう言って小夜は一輝の側に並べてある歩の駒を5枚中央から順に取り、振り駒を始めようとしていた。 「雰囲気出したいから記録係っぽく言うわね」 「細かいな」 「ふふふ、振り駒です。長谷四段の振り先です」  本来公式戦では記録係がこういった言い回しをするのだが、小夜は雰囲気を出したくそう言ったのである。  そしてベンチから駒が落ちないようそっとベンチに駒を落とし、駒の裏表を告げる。 「と金が3枚なので、牧野女流初段の先手となります」  振り駒とは将棋において先手後手を決める儀式である。格上の歩を中央より5枚取り、文字通り駒を振るのだ。  そして転がった駒の表裏の枚数で先手後手が決まる。  歩の枚数が多ければ格上が先手であり、と金、いわゆる裏の駒の枚数が多ければ格下が先手となるのだ。  そして先後が決まると歩を並べ直し、互いに頭を下げて挨拶をする。 「よろしくお願いします!」  挨拶を終えると先手の小夜が駒に手をやる。  初手は7六歩と角が通るように歩を1歩前に進める。  将棋において歩は前に1歩づつ前身しかできない駒であり、角は角行とも呼ばれ、斜めのラインなら全てに動くことができるのだ。  ただし、相手の駒と重なり駒を取った場合はそこで止まらなければならず、また味方の駒を飛び越えることはできないのだ。  その小夜の動きを見て、一輝は8四歩と飛車が進みやすくするように歩を1歩前に進める。  飛車という駒は縦と横のライン全てに動くことができるのだ。  そして次の小夜の手番で小夜は7八飛車と飛車を横に動かしたのである。  その動きを見て一輝が思わず言葉をもらす。 「三間飛車か、小夜ちゃんが得意戦法だね」 「まあね、そういう一輝君も居飛車で対抗系になったからお互いの得意形で勝負って事よ」  居飛車とは将棋の戦形であり、基本的には飛車を定位置で攻めの軸にして戦う戦形である。  それに対し三間飛車とは自身から見て左から3筋に飛車を振る戦法であり、小夜はそれを得意としており、一輝もまた居飛車での対振りが得意としており互いの本気がぶつかろうとしている。 解説:今回解説したいのは飛車と角という駒についてです。 基本的には大きく動けるこの駒を軸にして戦うので、作中であったように最初は飛車か角を動きやすくするために歩を進めるのが将棋のセオリーです。 他の初手もあるのですがそれは作中ででた際に解説したいと思います。
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加