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Ⅱ、ケンカ
きっかけは、いつだって些細なこと。特にこれといった理由がある訳ではなくて、何となく上手くいかない時ってよくあると思う。特に女子は。大抵は、お互いに少しずつ気遣いあって、またいつもの日常に戻っていくのだけど。
ただ、今回はそれが何故か長引いてしまった。たまたま2人とも仕事が忙しくて、顔を合わせるタイミングが少なかったというのも理由としてはあるけれど、そんなのはただの言い訳だ。子どもじみたことをしていると分かっていても、大人になるとちょっとした仲直りすら出来なくなる。
憂鬱な気持ちになりながら、ユキは前日に用意しておいたワンピースに袖を通す。
せっかくの恋人とのデートの日なのに、こんな気分で出掛けることになるなんて、彼と約束をした時には思ってもみなかった。
窓際のドレッサーの前に座れば、セット前の乱れた髪が、綺麗なワンピースに似合わずに肩にかかっていた。せめてもと思いブラシを通してから、ゴムで括って先にメイクをする。アイシャドウをブラシに乗せながら、今夜帰ってきたらどんな顔をしようかなんてことを考えていると、鏡越しに、彼女が部屋の入口に立っているのが目に入った。
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