SOUJI依存症

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 ピピピ  ピピピ      午前八時。    僕はスマホのアラームで目を覚ました。    カーテンの隙間から今日の幸福を約束するように金色の朝日が真っすぐ僕に差していた。今日も昨日と同じ平和な一日が始まる。  八時か……明日は七時にしようか、それとも九時でもいいか。勝手にしろ……だな。起きたい時間に起きればいいさ。毎日早起きしろって煩く言っていた母も家を出て行って久しい。弟も昨昨年十八歳で自立して、今は父と二人。ファミリー用の4LDKの住宅が少し広く感じる今日この頃だ。    階段を降りると、階下すぐの洗面所で水道の水がバシャバシャする音がした。父も今起きたばかりのようだ。洗面台の戸棚をパタパタと開け閉めする音がして、洗い立ての真っ白なタオルで顔をふきふき洗面所から出てきた父に、僕はにこやかに朝の挨拶をした。 「おはよう、父さん」 「おう、蒼汰、おはよう」 「父さんは今日、どこにするの? 掃除」 「俺は今日〈ぴよよん公園〉に行く。お前もどうだ一緒に。今朝は銀杏の落ち葉がすごいことになってると思うぞ。たぶん昨晩の強風で辺り一面黄色一色だろう」 「銀杏の落ち葉? だけど、八時じゃ、もう近所のお爺さんやお婆さんがきれいに掃いてしまったかもしれないよ」 「バカ、蒼汰、銀杏なめんなよ。あの公園の銀杏の葉っぱをかき集めるには、一時間や二時間じゃすまないさ」 「そうかあ。じゃあ今日は側溝掃除は止めて、僕も父さんと一緒に〈ぴよよん公園〉に行くよ」  僕はそういうわけで、久しぶりに父と連れ立って公園の掃除をすることにした。父は本当は公園掃除より側溝掃除の方がやりがいがあって好きらしいのだけれど、年のせいかあれは腰がかなりヤバいらしい。どこも同じような理由なのか、最近の側溝掃除はもっぱら僕ら若い者の仕事になった。きついところは僕らに任せればいいさ。僕らはまだまだ汗をかいて体を酷使するような、やりがいがあるものを欲しているのだ。  
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