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「オイ、コイツらに盗んだモンを運び出させろ」
「わ、分かった。お前達、ベッドと毛布を持って来るんだ」
「父ちゃん……」
「いいから、早くするんだ!」
男が怒鳴ると、最初の少年を筆頭に、一斉に子ども達がアジトに姿を消した。それから、程なくズルズルと引きずる音がして、少年達が平たい楕円形のものと千切れた布切れを幾つか抱えて来た。どちらも泥か何かで茶色く汚れ、見る影もない。
「テメェら、よぉく見ておくんだぜ」
男の子ども達がズラリと並ぶ前で、俺はヤツらの父親の身体を地面に押し倒して上から体重をかけ、1番長い短剣で一息に心臓を貫いた。
「アグ……ガフッ!」
口から血を吹いて、男は崩れ落ちた。白眼を剥いた顔を子ども達に向けたまま、芝生の上に転がる身体がビクビクと痙攣している。
「父ちゃあんっ!! よくも……」
「来んなっ! 近寄るヤツは、殺る。ガキだからって、容赦しねぇぞ!」
最初に顔を出した少年は、1番年長なのだろう。飛び掛かろうとしたものの、俺の剣幕に固まると、他の子ども達を背中に庇うように一歩だけ前に出た。
「テメェら、母親は居るのか?」
正面の少年は、俺を睨んだまま首を振る。他の子ども達はブルブルと震え、小さい者は隣のきょうだいと抱き合い、ボロボロ泣いている。
「それじゃあ、このままここを出て行け。そして、2度とこの城内に戻って来んな。朝になっても残っているヤツは、バラバラに引き裂いてやる」
ギロリと牙を剥くと、甲高い悲鳴が短く上がる。
「どうして……僕らを見逃すんだ……?」
恐怖と怒りを抱えた眼差しが、真っ直ぐ俺に向けられる。
ケッ、と呟いて、彼を見据える。視線が交わるが、決して逸らさない。悪くねぇ、いい度胸じゃねぇか。
「フン……寄る辺のねぇ弱いモンは、覚悟を持って生きていくしかねぇ。覚えとけっ!」
フゥーッと背中を逆立てて、身体を膨らませる。生臭い息で低く唸り声を上げれば、彼らはビクリと身震いした後、弾かれたように逃げ出した。月明かりが満ちた中庭で、小さな小さな黒い影達が、クモの子のように城壁の隙間に頭を突っ込み、出て行った。
灰色の骸1つと奪い返した戦利品を並べたまま、俺はレンガの欠片を引きずってきて、アジトの出入口を塞いだ。城壁の隙間は、追って修繕を促さねばならないだろう。
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