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そうやってその夜、ぼくはキャスを家まで送っていった。レナー夫人は心配げにキャスを見ていた。
「一年と約束しましたから。成功したら成功したで、お祝いをすればいい」
ぼくは適当な事を言った。大抵の場合、成功する事は無い。お決まりのコースを行くのか、少し回り道をするのかの違いだ。
「ケイン、ありがとう」
キャスはそう言ったけれど、ぼくは軽い自責の念を抱えたまま、帰途についた。
それからまた少し経った日の午後。
ぼくがジョナの店でボブじいさんの話を聞いていると、珍しくレナー夫人がやって来た。
嫌な予感がした。
その手のニュースは、聴き慣れることはなかったが、アメリカではよくある事件だった。
屍体が綺麗だっただけでも、ありがたい話だった。
ぼくはレナー夫人にお悔みを言い、ボブじいさんと献杯した。
人生はやり直しがきかないけれど、それを試すか試さないかチャレンジするのは自分だ。
そして運が悪かったという事は、往々にしてある。
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