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ガススタンド
スタンのトレーラーハウスで壊れたミキサーを修理してやった帰り、ガソリンスタンドに寄った。
シボレーのピックアップはこちらに来た時に破格で出ていたので迷わず購入した。それ以来、あちこち手を入れながらずっと乗っている。ここでは車が無いと生活ができないからだ。
ガスを入れ終わった頃に、保安官事務所のSUVが入ってきた。乗っていたのはパックマイヤー保安官捕だった。SUVはフォード社のものだ。
「やぁケイン。シェビーの調子はどうだ」
赤鼻の保安官捕は大きな図体を揺らしながら言った。警官の習性なのか、手は常に腰の所にあって、すぐに銃把を掴めるようにしている。それは誰の前でもそうだった。
「あちこちガタが来てるよ。買った時からそうだったけど」
「なんでトヨタにしなかったんだ。お前の国の車は、丈夫でよく走るだろう」
のしのしと給油機に近づき、給油ノズルを手にして器用にフォードにガスを注ぎ入れながら、パックはからかって来る。ぼくがむきになるのを待っているのだ。
「乗りこなしやすい女は飽きが来るだろう?」
「なるほど、違いない」
パックは楽しそうにそう言い笑ったが、
「キャシーの事は残念だった」
と不意に言葉のトーンを落として言った。「明るくていい子だった」
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