第一章 まず、談捨離

2/13
前へ
/55ページ
次へ
 「今はそれで」  すぐにチューハイが届いたので、あたしは一気に三分の一くらい飲んだ。  「(いく)、ちょっとペース落としなよ。潰れても知らないよ」  友人の言うことは分かるけど、飲まずにはいられないのだ。  「分かってると思うけど、そのままなら、郁、人生()むよ」  痛い一言に、胸を押さえる真似をするけど、詩穂は容赦ない。  「あいつは現状維持が一番だから、郁と別れないって。  自分よりも稼いで家事もしてくれる女なんて、簡単に見つからないから離すわけないよ。  それと、ちょっと聞いたけど、また転職したってほんと?」  テーブルに突っ伏しながら頷くあたしを見て、事実と理解した詩穂は深く溜息をついた。  「マジ、別れな。これ以上、人生を無駄にしたくなかったらね」  詩穂が、あたしを思って言ってくれているのは分かる。これが逆の立場なら、あたしも絶対別れるように言う。  でも、自分だと決心がつかなかった。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

457人が本棚に入れています
本棚に追加