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喉から手が出る程に
「おーい、俺の携帯どこいったか知らね?」
『アオヤマ』という男がポケットに手を突っ込んだ状態で辺りをキョロキョロしながら問う。
「知らないわよ。さっきのドブ沼にでも落としてきたんじゃないの?」
『アカハ』という女性が自分の携帯をいじりながら突っぱねるように返した。
「んなわけねぇだろ…。おい、ちょっと電話かけてくれよ。その辺にあれば音でわかるから」
「だから知らないわよ。あんたの番号なんて」
「あれ?そうだっけ?」
アオヤマは不思議そうな表情をしながら頭をポリポリと掻く。
「じゃあどうやって俺お前と待ち合わせしたんだ!??」
少し歩くとハッとしたようにアオヤマは振り返って言う。
「"メール"があるでしょ?馬鹿なの?」
アカハは呆れた顔で今度はアオヤマに目を向けた。
「あ〜じゃああれだ、とりあえずメールしてくれ!」
「一瞬しか音鳴らないけどわかるの?送ってみるけど…」
アカハは慣れた手つきで携帯をタッチしてアオヤマ宛にメールを送った。
しばしの沈黙
「…だめだ、聞こえねぇ」
アオヤマは下を向いて肩を落とした。
「だからさっきのドブ沼でしょ?いいじゃない、たかが携帯の一本や二本。それより、急がないとヘリが来ちゃうよ」
「ヘリ?ヘリが何だってんだ?」
「は?何よアオヤマ、あんた今日ちょっと変よ?」
アカハの顔は呆れと共に驚愕の表情も混じっていた。
「ヘリって"ヘリコプター"だろ?それが来たら何だよって話だよ。お前こそ、今日なんか変だぞ?それにさっきから言ってる"ドブ沼"なんかそもそも通ってねぇし…!」
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