喉から手が出る程に

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「…!」 アカハの表情が曇った。 「あんた本気で言ってるの…それ…」 彼女の普段見ない表情にアオヤマも動揺した。 「だから…何の話かわかんねぇって言ってんだよ。俺たちは…」 一瞬息が詰まる。 「俺たちは…何をしようとしてたんだ?」 アオヤマは喉元まで出ていたはずの次の言葉を失った感覚だった。 一つ前に何を言おうとしていたのかは思い出せない。 「深酒でもしたの?私たちは今からヘリに乗って新宿へ向かい、みどり子とくろ助と合流して、そこから渋谷へ向かってスクランブル交差点に爆弾を設置するの。ここのところ変なウイルスとか流行ったせいで人気はずっと少なかったけど、今なら充分だわ」 アカハは真面目な表情のままつらつらと自分たちが共に行動している"理由"を語った。 それを聞いたアオヤマは更に混乱し、頭を抱える。 「深酒?俺たちは"未成年"だ…!"みどり子"?"くろ助"?誰だそりゃ?それに変なウイルスって何だ?何も知らねぇ…何も覚えてねぇ…!アカハ、やっぱりお前こそどうかしてる!いつから俺たちはテロリストになったんだ!?」 アオヤマは気が狂いそうに訴えた。 そして彼の訴えを聞いたアカハに頭痛が走る。 まるで夢でも見ているかのような、 次々と、目まぐるしく脳裏の景色が変わっていく。 「そうだ、買い物に行かなきゃいけないんだった…!政治家に忖度するの。〇〇区長と××区長が裏取引してるらしいからそこを利用してやるのよ、ついでにあんたの携帯買いなさい。"スマートフォン"っていう最新機種が出てるらしいから」 アカハの口から突拍子もなく、次々と出てくる情報がアオヤマには何一つ理解出来なかった。 自分の中の記憶と溶け合う部分とまるで合わない部分。 そして溶けかけていた部分が何事もなかったかの様に隔離されていく感覚。 消えていく 自分たちは何者なのか 自分たちはどういった関係だったのか 何かとても大切なものだっという"記憶"だけが残り、アオヤマは口を開く。 「おい、アカハ」 「…何?"アイザワ"くん」 アカハは忙しそうな顔でそう、言った。 「お前はーーーー」 ーーーーーーーーーーー 「お前の名前、何だっけ?」
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