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「今から秋本に連絡して、それ何番目のボタンなのか聞いてごらんよ」
美雪は心の底から愉快そうにそう言った。
「ええ?その流れでこれ第三ボタンだから、とか言われたら悪意しか感じないんですけど?」
「だからといって第二ボタンだって言われたらあんたどうすんの?」
「ええ?」
どうしよう、と夏海はボタンを見下ろす。
「お前の性格で付き合って半年で結婚とか、うまくいくわけないって」ときっぱり言い切った秋本の顔が頭に浮かぶ。
「じゃあどれくらい付き合ったら結婚できるわけ?」と詰め寄ると、
「まあ十年は必要だな。」と秋本は自信満々に言った。
十年。
今が卒業して六年弱だから、今度の四月で秋本と出会ってから丁度十年だ。
「えっと。」
夏海は途方に暮れる。
「もうすぐ十年だから、結婚する?」
「ちょっと、私にプロポーズしてどうすんのよ」と美雪がこらえきれずにまた噴き出す。
「まあ私は、あんたたちが早くくっつけばいいってずっと思ってたけどね」
「思ってたんだったら早く言ってよ!」
「そんなの、自分たちで気付いてどうにかするしかないでしょう」
美雪は落ち着き払って言った。
「それに、まだ第四ボタンっていう可能性もあるんだからね。連絡して聞きなさいよ、いいね」
と電話を切ってしまう。
電話のこちら側で夏海は途方に暮れた。大掃除をするつもりが、逆に心の中がとっ散らかってしまった。でもそれは、不愉快な散らかり方ではなかった。
大掃除で出てきたガラクタの山に囲まれて、子供の頃に大切にしていたキラキラの宝物を見つけたような、ちょっとワクワクする気持ちでもあるのだった。
「ねえねえこれって何番目のボタン?」と秋本にメッセージを送ってみる。
どんな返事が来るのかな、とドキドキしながら夏海はぎゅっとスマホを握りしめた。
おしまい
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